「当時は、千賀が打者のレベル低下を煽っているかのように受け取られ、一部から批判を浴びたものでした。しかし、その真意は打者を卑下するものではなく、野球の進化を見据えた合理的な分析だったと思います。 千賀自身、その根拠としてデータ解析技術の向上と投手のトレーニング環境の充実を挙げていました。球速や回転数を測定する『ラプソード』などの機器の普及によって、投手は平均球速や変化球のキレを数値化し、自らの能力を劇的に向上させられるようになった。
一方で打者は、バッティングだけでなく走塁や守備の練習も並行せねばならず、投手の進化スピードに完全に対応するのは容易ではない、というわけです。今や150キロ台の直球が当たり前になり、球速が人間の反射神経の限界に迫っているという当時の彼の指摘は、現在の投高打低の状況を見れば完全に的中していたと言えます」(スポーツ紙記者)
千賀の発言には、当時、球界内からも反論の声も上がっていた。中日の大野雄大は同年のオールスターゲームに際した手記の中でこの話題に触れ、「開幕から1カ月くらい抑えるピッチャーはいるが、夏場以降が大変だから絶対そんなことはない」と言い切った。長年ローテーションを守ってきた先発左腕としてのプライドだったのだろうが、現在のプロ野球は夏場以降も投高打低のトレンドは変わっていないのが実情だ。
ネット上でも《4年前に千賀が言っていたときは傲慢だと思って叩いたけど、未来が完全に見えていた》《今のプロ野球は2割5分打てば強打者扱い》《1点の重みは増したけど野手のスターが生まれにくい環境なのは寂しい》といった声が聞かれる。
レジェンドも現代の“打者理論”に苦言
こうした打撃の地盤沈下にはレジェンドからも苦言が呈されてきた。野球評論家の江本孟紀氏も、昨年自身のYouTubeチャンネルで、3割打者がいなくなった理由について持論を展開している。
「江本氏は、近年の打者がアメリカの“フライボール革命”などの流行に影響されすぎている点や、基礎的な走り込み、バットスイングの絶対量が不足している点を指摘。ウェイトトレーニングを重視する選手が多いことにも触れ、『筋肉をつけたら飛ぶと思ってるのは勘違い』と一刀両断しています。
ただ、驚異的な進化を遂げる投手陣の球威に対抗するためには、ウェイトトレーニングによるパワーアップや打球速度の向上は不可欠という見方もあります。選手たちにしてみれば、根性論やかつての基本練習だけでなく、パワーをつけなければそもそも現代のピッチングには太刀打ちできない、という思いがあるのかもしれません」(スポーツライター)
データと肉体の限界がせめぎ合う中、プロ野球における投打のバランスがどのように推移していくのか。今後は「打率2割5分で一流、3割なら異次元」という新たな評価基準が定着していくのかもしれない。


















