慕ってくれたアイドルとの思い出─
そんなたくさんの提供曲の中でも忘れられないのが、岡田有希子さんとの思い出だった。
「あんな亡くなり方をするなんて。彼女に書いた曲は、苦しくてずっと歌えませんでしたけど、ようやく最近歌えるようになりました。有希子ちゃんは、私のことを大好きと慕ってくれていました。レコーディングが終わるまで待っていてくれたときもありました。私が提供した曲の歌入れはとっくに終わっているのに、必ずその歌を歌ってからほかの曲の歌入れをしていたそうです」
そして、誰もが尾崎亜美の提供曲として真っ先に頭に浮かぶであろう、松田聖子の『天使のウィンク』は、驚きの制作秘話があった。
「私は楽曲依頼があるとできるだけご本人に会って、その方の魅力を引き出すように考えます。でも、初めて聖子さんにはお会いしないで書きました。というのも、年末の大掃除をしているときにシングル曲を書いてほしいとお電話をいただいて。明日までに仕上げてほしいと言われたんですが、松本隆さんではなく作詞もお願いしますと言われて、ひゃー!とびっくり。
とりあえず大掃除を続けていたら、窓から陽差しが差し込んで、埃がキラキラ光って舞うのが見えたんです。このときちょうど神話をテーマにした自分のアルバムを制作中だったから天使が舞っているように感じて、『天使のウィンク』が浮かびました。曲調も少しバロック調にして、音階が天に向かうようなイメージにしました」
このときに制作していた自身のアルバム『10番目のミュー』は、尾崎が大病を患い、手術のために全身麻酔をして意識朦朧とした中、神話をテーマに作りたいと浮かんだものだった。
「アルバムジャケットも天使の後ろ姿で、小さい羽が背中に生えています。実は、このアルバムと『天使のウィンク』は対になっているんです。レコーディングのときですが、聖子さんのボーカルに力がなかったのでお腹すいてない?と聞いたら、朝から何も食べていないと。それはレコーディングに影響するので、ちょこっとだけ何か食べておいでと話しました。
彼女が食事をとっている間に、それまでレコーディングした音源を聴いて編集して、彼女が戻ってきて編集したものを聞かせました。すると“あー、わかりました”と言って歌ったんですが、見違えるほど素晴らしくて。『ボーイの季節』のレコーディングのときは、結婚と休業が決まっていたので感情移入して涙ぐんでしまって。声が変わっちゃうから泣かないでとお願いしたら、やりきってくれました。天才の風格を見せられましたね。
中森明菜さんにも書かせていただきましたが、会話ではか細い声なんですよ。でも歌声はでっかいだろうと思って書いたらやっぱり。あと、歌がうまかったなと思うのは、河合奈保子さんですね。素晴らしい方にたくさん関われてうれしいです」



















