目次
Page 1
ー 米ぬか靴下の“世界の第一人者になる”
Page 2
ー 会社に居場所がない、忘れもしない屈辱の言葉
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ー 米ぬか靴下作り、鍋煮込みからスタート!?
Page 4
ー 営業での挫折|ゴミ箱に頭を突っ込み……
Page 5
ー 「父の夢を守ろう!」娘の入社で新展開
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ー 米ぬか靴下から新商品「締め付けない靴下」を親子で開発!
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ー 思いやりを大切にする社長の新たな挑戦!

 遅咲きの有名人といえば、65歳のとき起業したケンタッキーフライドチキンのカーネル・サンダース、日本ではアンパンマンの生みの親で、69歳のときテレビアニメ『それいけ!アンパンマン』でブレイクしたやなせたかしである。

 ここにも一人、遅咲き経営者がいる。奈良県に本拠を構える「鈴木靴下」の鈴木和夫社長(67)だ。

 鈴木さんは世界で初めて米ぬかを含んだ繊維で靴下を作った。米ぬかとは、精米するときに出るもので、スキンケア商品に使われたりしている。

米ぬか靴下の“世界の第一人者になる”

 米ぬかで靴下─前例のない試みゆえ、苦難の連続だった。

「うちは兼業農家でね。田んぼでできた米を精米するたび、ぬかを捨てるのはもったいない、靴下に生かせないかなあという思いが強くなりました」

 着想したのが25歳、商品がようやく完成したときには48歳になっていた。

『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日系)や『鶴瓶の家族に乾杯』(NHK)などテレビでも取り上げられるようになったのは60歳を過ぎてからだ。着想からなんと40年以上、70歳に近づく今、こう言う。

「これからがスタートだ」

 鈴木さんは家業を継ぐ形で、初代社長でもある厳しい父親に「あかんたれ」(意気地なし)と言われ続け、入社後、工場の下働きに20年近く耐えた。実現は難しいと思われていた米ぬか靴下の開発は、その合間を縫ってほそぼそと続けてきたという。

 普通ならば途中で挫折しそうな鈴木さんを支えたのは、妻と長女だった。

 先代社長から「できるわけない」と言われても、従業員から「意味のないもん作ってもしゃーない」と突き放されても、妻の喜子さん(64)はそばで見守ってきた。

「本人がずっと思い続けてきた靴下だったので、できるできないより、やったほうがいいんじゃないかと考えて、うまくいくよう手助けできるところはしたいと思っていました」(喜子さん)

 鈴木さんが苦境に立たされると、CAとして世界中を飛び回っていた長女・みどりさん(38)が、航空会社を辞めてバックアップした。

 今や年商4億3000万円('26年3月期)のうち3割近くを米ぬか繊維関連が占めるまでに成長し、社員の期待を集める商品になった。

 やわらかい奈良の言葉で、にこやかに話す鈴木さんだが、一本気で、少々負けず嫌いである。

「みんな目先の成果を出したいから、今ならば流行のリカバリーウエアを作りたがる。でも私はそういうのに見向きもしないで、ひたすら米ぬか靴下に懸けました。自分に言い聞かせてきたのは、米ぬか靴下の“世界の第一人者になる”ことです」

 従業員43人。奈良県北西部、日本で2番目に小さい面積の三宅町にあるメーカー社長が、米ぬか靴下で世界進出を目指すまでの姿を追った。