量・質ともによくない“ダメ睡眠”を続けているとどうなるのか? 脳や身体への悪影響は計り知れない。3人の専門家に取材した。

風邪や生活習慣病、早死にをもたらす

 睡眠にはまず、疲れた心身を回復する役割がある。『スリープクリニック銀座』の院長で睡眠障害に詳しい渋井佳代先生によると、

「特に眠ってから最初のノンレム睡眠時(深い眠りのとき)に分泌される成長ホルモンは、免疫力を高めたり、傷んだ細胞を修復したり再生したりする大切なもの。よい睡眠が得られていないと成長ホルモンが足りず、抵抗力が弱まって病気にかかりやすくなります」

 具体的には、風邪やインフルエンザにかかりやすくなったり帯状疱疹を患ったりするほか、高血圧や糖尿病をはじめ、あらゆる生活習慣病を引き起こすという。

 また、睡眠時間の過不足は、寿命をも縮めてしまう。1980年代に米国で100万人以上を対象に行われた睡眠時間と寿命に関する調査では、1日の睡眠時間が6・5~7・4時間の人が最も死亡率が低く、それより多くても少なくても寿命は短くなる傾向にあったという。

 また、成長ホルモンが足りないと、皮膚や髪の毛の修復や再生力も低下。当然、見た目も悪くなる。

「肌は荒れてボロボロになり、シミやシワもできやすくなる。髪は薄毛に、白髪も増えてしまいます」(渋井先生、以下同)

食欲暴走→過食→おデブの仲間入り

 しかも、睡眠不足は肥満も促すというから恐ろしい。

「米国の研究では、平均睡眠時間が7~9時間のグループを基準に、6時間だと23%、5時間だと50%、そして4時間以下は73%と、睡眠時間が短くなるほど肥満になる確率が高くなるという結果も出ています」

 睡眠が足りないと、食欲を抑えるレプチンというホルモンが減り、反対に食欲を促すグレリンというホルモンが増え、結果として過食に走りやすくなるのが、その理由だという。

「単純に夜中まで起きているとつい食べものに手が出てしまうこともありますよね。また、夜遅く食べたものは脂肪として蓄積されやすいこともわかっています」