目次
Page 1
ー 幼稚園からの勉強の貯金のおかげでなんとか合格できた
Page 2
ー 評価軸は一つじゃない

 

 学生らの不登校や、新入社員の退職が増えるとされる「魔の6月」。受験戦争や就活が過熱の一途をたどる中、「いい大学からいい会社へ」のプレッシャーに押しつぶされそうな日本の若者たちに、エリートの道からあえて外れた芸人のシドニー石井さんが自身の貴重な体験を語ってくれた。

幼稚園からの勉強の貯金のおかげでなんとか合格できた

 吉本興業所属のお笑い芸人、シドニー石井。令和ロマンらと同期で、45万人の登録者を誇るYouTubeチャンネル「僕らの別荘」のメンバーでもある。

 動画では、神童と呼ばれた幼少期、ほぼ“ノー勉強”で合格を勝ち取った中学受験、付属高校からの内部進学失敗など、数々のエピソードを披露。大きな反響を呼んでいる。

 教育熱心な母と、東大に進んだ優秀な姉を持ち、小さな違和感を抱えながら過ごした10代。親が期待する道から大きく外れたが、「今が楽しい」と笑顔で語る彼に、当時の葛藤や、今の思いを聞いた。

幼稚園のころは、親に言われるまま朝6時に起きて、勉強してから登園していました。それが普通だと思ってたんです」(シドニー石井、以下同)

 小学生からは公文式、習字、水泳など週7回の習い事の日々。全国模試では1位になったことも。友人からも教師からも、神童として扱われた。

小学4年生から、完全に中学受験にシフトしました。入塾前のテストで1位を取っちゃって、俺は天才だ、ってマジで思ってましたね(笑)

 厳しいカリキュラムで知られるSAPIXで、成績上位者を対象とした“αクラス”の所属が決まった。

だけどこのころから、自分が本当は勉強が好きじゃないことに気づき始めるんです

 徐々に勉強しなくなり、クラスのレベルも落ちていった。

当然、母から怒られますよね。夜の10時ぐらいに、めっちゃ眠いのに、勉強させられる。うとうとしていたら、机をバンッ! て叩かれて起こされたことは覚えてます

家族と仲良くなれない、と石井本人の弁。人生観の違いでできた溝はいつか埋まるのか? 撮影/佐藤靖彦
家族と仲良くなれない、と石井本人の弁。人生観の違いでできた溝はいつか埋まるのか? 撮影/佐藤靖彦

 あっけらかんと語るが、今の時代だと“教育虐待”とされてもおかしくない状況だ。どう乗り切ったのか。

僕、反抗期が早くて(笑)。うるせーんだよババア!って言い返してましたよ

 ろくに勉強しないまま中学受験を迎えたが、なんと明治大学の付属中を含め、いくつかの難関中学に合格。

もうこれで難関大学まで進めるんだ、人生って簡単だなって(笑)。でも、後から気づくんですけど、別に僕は天才でもなんでもなかった。要は幼稚園からの勉強の貯金のおかげで、なんとか合格できただけだったんです

 入学後、真っ先に挑んだのは“キャラ変”だった。

優等生って、友人と距離ができちゃうんです。みんながふざけている輪の中に入りたいのに、“無理しないで”と気を使われたり。小学生のころから、それがずっと嫌で