目次
Page 1
ー 書いているうちに気づいたこと
Page 2
ー 誰かを傷つけないと生まれない感情もある
Page 3
ー 「周囲からは浮いていました(笑)」

 芥川賞受賞作『蹴りたい背中』をはじめ、女性たちの心の揺れや感情をリアルな筆致で書き続けている、綿矢りささん最新作『激しく煌めく短い命』は、女性同士の18年間にわたる関係を描いた長編恋愛小説だ。

この小説は4年の年月をかけて連載で書いたものです。作品の中で18年もの時間が流れているせいか、すごく長く付き合って書いてきたような感覚があるんです

書いているうちに気づいたこと

 二人の関係は京都に暮らす久乃が、中学校の入学式で同級生の綸に出会うところから始まり、物語は久乃の視点で描かれている。久乃は「機能不全家族」で育ち、中学受験に失敗して公立の中学校へ進学した。

久乃はすごくまじめな性格で、つらいことがあっても勉強をがんばることによって乗り越えてきました。その一方で、悩みや不安を人に相談したりはせずに頭の中で考え続け、ネガティブな方向に引っ張られてしまいがちなところがあるなぁと、書いているうちに気づきました

 そんな久乃と心を通わせる綸はおしゃれでセンスがよく、歌も料理もうまく、クラスの中でも目立つ存在の女子だ。

綸は女子が憧れる、おしゃれで家庭的な女の子というイメージで描きました。勉強が苦手で気が短いところもありますが、とても優しい一面もあります。久乃にとって、綸のような温かみのある人格というのは一番、心に沁みるように思います

 入学以来、二人の心の距離は少しずつ近づいていく。だが、とある出来事をきっかけに関係が崩れ、卒業式の日に決定的な溝ができてしまう。

書き始めた当初から、二人が血が出るくらいのケンカをしている場面が頭の中に浮かんでいたんです。“なんでこの二人はこんなにうまくいかへんのやろう”と思いながら、その場面に向かって書き進めていたような感覚です