まさかの2000万円赤字……

 今では“イヌ充ライフ”を満喫するみとだか、その脳裏には、忘れられないある出来事があった。

 1999年の春、長野県八ヶ岳に小さな別荘を建てたみとは、知人の紹介で2004年のゴールデンウイークにドッグカフェ『八ヶ岳わんこ物語』をオープンする。

「別荘地の真ん中を走るメイン道路に面しているので立地もよく、真向かいにあるステーキレストラン以外はお店もない。しかも、そのお店はGWや夏には行列ができるほどの人気店。“近くに気軽にランチをしたりお茶を飲めるカフェがあれば、リキ丸と一緒に入りたい……”。そんな素敵すぎる妄想に取り憑かれた私のやる気スイッチは、たちまちオンになってしまいました」

長野県富士見高原で営業していたドッグカフェ『八ヶ岳わんこ物語』には、犬友のほか、マンガや小説のファンも多く訪れた
【写真】折原みとさんの幼少期、高校時代、逗子での生活の様子など

 メニューを自分で考え、料理もしてオーダーも取って、レジまで打ってしまうオーナーのみと。たちまち評判を呼び、人気店となるが、現実はそんなに甘くはなかった。

 別荘族の大多数は11月に水抜きをして別荘を閉め、翌年のGWまでやってこない。冬季は観光客もほとんど来ないので実は12月から4月までは開店休業になってしまうのである。

 さらに、オープン3年目のGWに悲劇が起きる。

「駐車場に車を止めて店に入ろうとしたお客様がふとしたはずみでリードを放してしまい、連れていた愛犬が車にはねられる事故が起きてしまいました」

 お店そっちのけで、動物病院まで付き添い、幸い命には別状がなく大事には至らなかったものの、この事件は、みとの心に大きなトラウマを残した。

「うちのお店に来てくれたお客さんとわんこが、不幸な目に遭うようなことがあったら耐えられない。この事件以来、私の足はお店から遠のいてしまいました」

 結局、お店は賃貸契約が切れる2007年の秋に閉め、5年間で2000万円を下らない赤字を出した。しかし、みとにとってはどんな逆境もストーリーの種。

「お店を1軒立ち上げ、経営し、自分も働いたという経験は貴重な財産になりました。うっかりドッグカフェオーナーになってしまった世間知らずの少女漫画家のドタバタ奮闘記をいずれ描いてみたいですね」