ついつい言ってしまう人の悪口。それが言えるのはお相手に心を許しているからなのですが、聞かされている側は心地がよくありません。恋人同士の場合は、そこにお相手の人間性を垣間見てしまいます。

 婚活ライターをしながら、仲人としてもお見合い現場に携わる筆者が、目の当たりにした婚活事情を、様々なテーマ別に考えてゆく連載。今回は、『人の悪口をいう恋人をどう受け止めるか』です。

心を許しているからこそ、悪口を言う。それが人間の心理でしょう。でも……(写真はイメージです)

泥酔したサラリーマンに放った一言

 会員の内田麻里恵さん(34歳、仮名)から、「吉田さんとの結婚はやっぱり考えられないので、交際終了にしたいと思います」と、連絡が入りました。

 吉田孝司さん(38歳、仮名)は、一部上場企業の社員で、同期の中ではいち早く課長になり、すでに部長候補だと言われている出世株です。結婚するには、とても条件がいい人でした。

 そんな吉田さんとお見合い後、交際に入った麻里恵さんは、当初“このまま結婚に進めたら”と、前向きでした。ですが、デートを重ねて行くうちに、吉田さんの発言で、気になるところが出てきました。

「努力家だし、仕事には一生懸命。それで今の地位があるのだと思うんです。でも一方で、自分が育ってきた環境にコンプレックスを持っている。

『父親は下町で小さな町工場をやっている職人。学歴もない。金もない。そんな父親を見てきたから、自分は努力して勉強して国立大に行った』と言うんですね」

 貧しさや悔しさをバネにのし上がってきた。それだけに、どこか人に優劣をつけるようなところがあるというのです。

 ある時、2人で夕食を食べ、有楽町駅に向かう道すがら、かなり酔っぱらったサラリーマン3人組に出会いました。その中のひとりが大声で上司の悪口を言っていたのを聞いて、吉田さんは言ったそうです。

「自分に能力がないから、ああやって酒を飲んで醜態を晒す。僕はそういう人間にはなりたくないな」

 その言葉を聞いて、麻里恵さんは、とても嫌な気持ちになったというのです。

 吉田さんは、体質的にお酒が全く飲めない。でも、麻里恵さんは気の置けない仲間とワイワイお酒を飲むのが好き。そんな時に気を許しているからこそ、仕事の愚痴をこぼすこともあります。

 有楽町の街を泥酔して上司の悪口をいっているサラリーマンの気持ちは、わからなくもない。

 それを、「能力がないから」と一刀両断してしまう吉田さんは、優秀かもしれないけれど、人としてのあたたかさや大らかさを感じられなかったというのです。