子どもたちからの可愛いリクエスト

 現在、事務局のスタッフとして参加しているボランティアの僧侶は13人。関西だけでなく、全国に点在する寺院の若い僧侶たちがインターネットでつながり、業務を行う。事務局のスタッフで、愛知県春日井市の「薬師山 林昌寺」の副住職でもある野田芳樹さん(29)が言う。

「私がいるお寺でもお供え物をどうにか無駄にしないように腐心していたところ、ネットサーフィンで『おてらおやつクラブ』の活動を知って、参加しました。代表は、私にとって灯台みたいな人。何か行動するときに迷ったら“松島さんならどうするだろう?”と考えます」

『おてらおやつクラブ』は、お寺にお供えされた食べ物を、子ども食堂や支援団体へ「おすそ分け」するのが役割。社会福祉協議会、児童養護施設、DV被害者のシェルターなどもその対象だ。

 母子家庭の支援団体『しんぐるまざあず・ふぉーらむ』の村山純子さん(60)は'14年以降、複数のお寺からおやつを受け取るようになった。

「『おてらおやつクラブ』からのお菓子は普段食べることがない贈答品が多いので、子どもだけでなく、大人にもホッとする時間を提供しているようです」

 最近、活動を知った母親から直接SOSのメールが届くことも増えている。

 冒頭で紹介した発送会も、個人の家庭に向けたものだ。

 どこの団体ともつながっていない家庭に事務局が直接支援を行うケースは約200世帯。松島さんは、あくまで「一時的な対応」と強調する。

「不確実な時代だからお坊さんにできる役割がある。救うための手段に気づけた」と松島さん
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「最終的には、孤立しないようにどこかの支援団体につなげるのが私たちの役目。中には公的支援が必要なのに“役場で子どもの同級生の親に会いたくない”という方もいました。インターネットから気軽にアクセスできれば、顔の見えない関係で相談できるのと、“お寺さんだったらなんとかしてくれるんじゃないか”というイメージもあって、問い合わせが増えていると思います

 松島さんのもとには、数多くの手紙が届く。中にはこんな可愛いリクエストもある。

「おぼうさん、わがし(和菓子)はもういいので、ぽてとちっぷをおくってください」

 数年間「おやつ」を送っている家庭の男の子からの手紙が心を打ったと松島さん。

「これって、子どもの本心だし、成長ですよね。ようやく子どもらしい姿を見せてくれたような気がして、うれしかったですね」

 事務局の坂下さんも言う。

「支援している家庭とのメールのやりとりで、最初は暗い文面だったのが、回数を重ねるうちに前向きになっていくのを感じることがあります。“今度資格試験を受けるんですよ”なんて報告をいただいたりするとうれしいですね」

「仕事が決まりました」とお供え物を持ってお礼参りに来る母親や、「受験に受かった」と報告に来る子もいる。ものをもらう習慣のない子どもが多く、「サンタクロースより、お坊さんが好き」という声も届いている。