ブレイディみかこさんといえば“ノー・フューチャー”の人である。イギリスの福祉や教育について書いた過去のノンフィクション作品でも、世の中の不平等や人生の不条理に怒って、このままじゃ、未来なんかないんだよと底辺からの本音を叫んできた。

わたしのフィロソフィーは、あくまでもノー・フューチャーだ」と過去の作品でも書いている。ところが、『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』は少し様相が違う。

あいつらは生きていく

 イギリスの南端、港町ブライトンで元底辺中学校に通う息子さんの日常を書いた本作は、未来がないどころか、未来をつかもうとする貧しい底辺キッズの姿を泣けるほど生き生きと描いている

 一体、怒れるパンクな書き手、ブレイディさんに何が起こったのか?

「41歳で(子どもを)産んだんですけど、産むとは思っていなかった。産むまでは子どもがすごい嫌いだったんですよ。ところが今では、あいつら手に未来握ってるんだ! みたいなことを思ってます(笑)

 だって私たちが死んだ後もあの子たちは生きていくじゃないですか。私たちが死んだらその後はキレイさっぱり終わり。

 その後のことは知ったこっちゃないけど、あいつらは生きていく。しかも子どもって常識をやすやすと超えられるんですよ。私たち大人の常識をね。そんな瞬間を見せつけられると、書かずにいられない

 私は54年間生きてきて考えたこともなかったことを、この子たちはこんなに小さいのに、考えたり話したりしてる

(親の常識を)あっさり超えてるっていうのに圧倒される。本の前書きでも書いたけど、私の人生に子どもが必要な時期になってるんだろうなって