絶望してベランダから飛び降りようと

 夫のあまりにもひどい仕打ちのせいで、志保さんの心身はますます悪化。息子さんが帰宅するとリビングで泣き崩れていたり、6階の自宅ベランダから飛び降りようとするところを息子さんに助けられたり、包丁をのど元に突きつけて「もう死にたい!」と嗚咽(おえつ)したり……。

 よりによって息子さんはまだ15歳。ナイーブな年齢で高校受験も控えているのに、母親が何をしでかすかわからず、目が離せない生活を強いられたのです。とても受験勉強に集中できるような環境ではありませんでした。実際のところ、担任の教諭から志保さんに「登校しなかったり、無断で下校したりすることが増えているけれど、おうちで何かありましたか?」と電話があったのですが、まさか自分のせいで息子が学校に通えないとは、口が裂けても言えません。

 このままでは志保さんが自ら命を絶つのも時間の問題でした。志保さんは担当医に「通院から入院に変えてほしい」と頼んだのですが、「病院の方針なので」と一蹴され、外来での抗がん剤治療を余儀なくされたのです。

「私は告知されてから死の恐怖と戦ってきて、心身ともにクタクタでした。今まで生きてきたなかで、こんなに苦しくて孤独で、絶望感を味わったことはありません」

 志保さんはそう振り返ります。抗がん剤治療はまだ3ターム目でしたが、途中でやめることを自らの意思で決めたのです。

 血液検査を受けるたびに腫瘍マーカーの値が上昇しており、日夜「死の恐怖」に怯(おび)えていたのですが、夫はいっさい容赦をせず、志保さんをさらなる地獄へ突き落そうとしたのです。次は何をしでかしたのでしょうか?

(後編に続く)

※後編は12月28日20時30分に公開します。


露木幸彦(つゆき・ゆきひこ)
1980年12月24日生まれ。國學院大學法学部卒。行政書士、ファイナンシャルプランナー。金融機関の融資担当時代は住宅ローンのトップセールス。男の離婚に特化して、行政書士事務所を開業。開業から6年間で有料相談件数7000件、公式サイト「離婚サポートnet」の会員数は6300人を突破し、業界で最大規模に成長させる。新聞やウェブメディアで執筆多数。著書に『男の離婚ケイカク クソ嫁からは逃げたもん勝ち なる早で! ! ! ! ! 慰謝料・親権・養育費・財産分与・不倫・調停』(主婦と生活社)など。
公式サイト http://www.tuyuki-office.jp/