正確な情報をお知らせしなくちゃ

 確かに乳房温存全摘出、乳房再建といった言葉は聞くものの実際どういうものなのか、詳しいことはあまり知られていません。

「がんサバイバーなんて言葉が大げさなくらい初期の乳がん患者たちの大半は標準治療をして寛解して社会復帰しています。でも、そういう人たちの声はほとんど聞こえてこないでしょう。だから、がんという言葉だけで怖がって、疑いがあっても次の検査に行かないとか、手術をすすめられても嫌がる人が後を絶たない。

 はたまた、どうしても乳房の全摘出には抵抗があって、温存を希望する人が多いんだけれど、無理に残してもひどく変形してしまうこともあって、変形したバスト用のパッドがあったりするんです。そこらへんご存じなくて温存を選んでしまう人もいるんじゃないかしら。

 私も実際、乳がんになってみたらいろいろわかったので、みなさんも無駄に怖がったり、人生を悲観したりしてほしくないと思って、最新情報として正確なものをお知らせしなくちゃと思ったんです

 認知症のお母様のこともずいぶんと赤裸々に描かれていますが、お母様の病状を書くことに迷いはありませんでしたか?

「赤裸々にするつもりはなかったんですけれど、2年前に介護についての取材を受けたときがあって、気づいたら私“介護の人”になっていたんですね(笑)。

 介護って、映像的には車椅子を押したり、スプーンでご飯を食べさせたり、オシメ替えたり……ってイメージができあがってて、ライターさんも物語を作り上げているから、私が経験している介護とちょっと違うと思って、自分で書くことにしたんです(笑)