【コラム3】海外から持ち込む“インバウンド菌”に注意

 AMR臨床リファレンスセンターの調べによると、東南アジアや南アジアへの旅行者の約6割が下痢や腹痛を起こした経験があるという。

「その原因の多くは大腸菌や、食中毒の菌として知られるキャンピロバクター、サルモネラ菌、ノロウイルスなどです。

 東南アジアなどの屋台で売られている食品には、これらの菌がついている可能性があります。特にカットフルーツなどの生ものは危険です。火を通しているものでも、調理後に菌がつくことがあり注意が必要です」(具芳明先生、以下同)

海外から持ち込む“インバウンド菌”にご注意 イラスト/ますみかん、つのだだいすけ
海外から持ち込む“インバウンド菌”にご注意 イラスト/ますみかん、つのだだいすけ
【写真】抗生物質に潜む危険性を可愛いイラストで説明

 東南アジアなど途上国には薬剤耐性菌が多く、知らない間に口にしている可能性がある。「腹痛や下痢を起こし自己判断で抗生物質を飲んでしまうと、薬剤耐性菌を増やしている可能性があります。そのまま日本に持ち帰り感染を拡大する原因にもなるので注意しましょう」

 同センター調べでは、抗生物質を海外旅行に持って行くという人は4割にも及ぶ。「海外に抗生物質を持って行く場合は、自己判断で服用せず医師の指示に従うことが大切です」

【コラム4】世界各国の薬剤耐性菌事情

日本 ●薬剤耐性が原因の死亡例も

 大阪府大東市の阪奈病院で、2019年8月までの2年半の間に、スーパー薬剤耐性菌に結核の入院患者19人が感染し、1人が発症して死亡。国立病院機構大阪医療センターにおいても、2010年からの4年間で薬剤耐性菌の腸内細菌に112名が感染し、死亡例が20例あった。

 政府が薬剤耐性菌の対策に本格的に乗りだしたのは'16年から。調査、教育、啓蒙活動が始まり、国内の状況を把握するだけでなく、国際的な背景への理解も進めている。

欧州 ●感染対策、教育、啓発を徹底

 欧州全体では年間3万3000人が、薬剤耐性菌の感染症で死亡。北欧、ドイツ、フランス、イギリスなどは抗生物質の適正使用、感染対策、教育、啓発がうまくいき、薬剤耐性菌の感染は少ない。逆に、ギリシャ、イタリア、ポルトガル、スペインなどでは、薬剤耐性菌の蔓延が止まらない状況にある。

 薬剤耐性菌は細菌だけでなく真菌(カビ)にもいる。ドイツではすべての抗生物質が効かないスーパー薬剤耐性菌の真菌、カンジダ・アウリス菌が発見されて話題となった。