医師が教える正しいサウナ

 加藤医師は「正しいサウナの入り方を知らない人も多い」と話す。

サウナ→水風呂→休憩で1セットですが、もっとも大切なのは休憩です。実はサウナと水風呂は、休憩で最高のリラックス状態を得るための“前座”でしかないんです」

 水風呂が苦手な人も多いが、必ずしも入らなければならないものなのか。

「水風呂がつらいのは、サウナで十分に身体が温まっていないから。サウナ室では下段がもっとも室温が低く、上段にかけて高くなっていきます。無理をせずに自分が快適と感じる段に座り、タオルで顔を覆いましょう。また、あぐらや体育座りで足と身体をなるべく同じ高さにそろえ、均一に温めます。

 意識を背中の真ん中と足先に集中し、この部分が温まったと感じられれば、深部体温が高まった証拠。水風呂も気持ちよく感じられるはずです。それでも冷たさが気になる人は、両手を水風呂から出すとよいでしょう。水風呂で心臓に負担をかけないためには、ゆっくりと息を吐きながら入ることも大切。身体の表面だけが冷えて、芯は温まっている状態がベストなので、水風呂は約1分で出てください」

 サウナと水風呂に正しく入ることができれば、休憩で深いリラックス状態、いわゆる“ととのった状態”を感じられるという。ちなみに、この1セットはトータル10分程度で十分とのこと。これまで、熱いサウナを長時間ガマンし続けてきた人には、目からウロコかもしれない。

サウナは正しく利用すれば、さまざまな健康効果が得られます。世界有数のサウナ大国・フィンランドの調査では、心筋梗塞などの心臓病のリスクが大幅に下がることがわかりました。また、血圧を10~15mmHg程度下げる効果もあります。ただし前述したように、重度の高血圧の人は危険を伴うこともあります。必ず医師に相談しましょう」

 フィンランドでは、認知症や呼吸器疾患の発症リスクの低下も報告されている。このほかにも、うつ病や睡眠障害の改善、肌の新陳代謝が促進されることによる美肌効果、肩こりや腰痛の緩和など、じつに多くのメリットがある。

「コロナ禍で健康意識が高まるなか、サウナには免疫力アップの効果があることもわかっています。サウナに入ることで、細胞の損傷を修復するヒートショックプロテインというタンパク質が体内で増加し、免疫細胞を活性化するためです」

 デメリットを理解しつつ、メリットを追い求めることで、サウナは100倍楽しくなる。無理なく活用し、その恩恵にあずかろう。

話を聞いたのは……●加藤容崇(かとう・やすたか)医師●医学博士。慶応義塾大学医学部腫瘍センター特任助教。専門は、がん遺伝子診断。予防医療としてのサウナに着目し『日本サウナ学会』の代表理事としても活動中。

(取材・文/植木淳子)