「私は根っからの仕事人間」

「世の中でいちばん楽しく立派なことは、一生涯を貫く仕事を持つということです」

 これはきぬさんが人生の指針にしている福沢諭吉の言葉である。

「いちしの里」で働く。現在でも週2日、半日ほど勤務している。きぬさんが元気にスタスタと歩く姿は施設を利用する入居者に希望を与える
「いちしの里」で働く。現在でも週2日、半日ほど勤務している。きぬさんが元気にスタスタと歩く姿は施設を利用する入居者に希望を与える
【写真】97歳の現役看護師・池田きぬさんの働いてる姿

 きぬさんは自身のことを「根っからの仕事人間」であると話す。3日間仕事が休みで家にいると、働きたいと思ってしまう。家にいるとぼんやりしてゆるんでいるが、仕事はそうもいかない。現在のように週1~2回の勤務があるおかげで、生活によいメリハリができるというのだ。

 実際、親の介護など、つらいことや悲しいことがあったとき、支えになったのは仕事だった。看護師という仕事は悲しみを支えるものであり、喜びや充実を得るものであり、気分転換でもあったのだ。

「一生を貫く仕事とは、給与の発生する“労働”だけではないと思うんです」。人生で成し遂げたいことや目的を持ち、行動し続けることこそが重要であると話す。

 次の目標は「いつか自分が施設に入ったら、ボランティアをしたい」。もしきぬさん自身が利用者として施設に入居しても、CDプレーヤーを持っていき音楽を流してみんなと歌いたいし、楽しく過ごすために率先して行動しようと決めている。ほかにも、現在勤務している「いちしの里」で4月からの本格的な電子化導入の予定を聞き、「パソコン教室に通いたい」、と社長に相談した、とも。

 年齢にとらわれず、新しいことに挑戦し続けるその精神が衰えることはない。