その一方で、オリジナルミュージカルのなかに“日本らしさ”を表現することにもエネルギーは注がれた。2000年代以降のジャニーズにおいてその流れを代表するのが、KinKi Kidsの堂本光一であり、現在はジャニーズ事務所副社長となった滝沢秀明だ。

 例えば、堂本光一のライフワークとなった『SHOCK』シリーズの物語の舞台はアメリカのブロードウェイだが、劇中の大きな見どころとなるのは激しく長い殺陣のシーン、そしてそのなかでの階段落ちのシーンであるというように、和の要素が盛り込まれる。

 さらに滝沢秀明が主演の『滝沢歌舞伎』では、その名のとおり和の要素が前面に出てくる。歌舞伎はもちろん、日本舞踊や和太鼓などのパフォーマンスが、ジャニーズ流の宙吊り(フライング)などの演出とともに目まぐるしく展開する。

 ジャニー喜多川は、こうした愛弟子たちの舞台の仕上がりに自信を深めていたようだ。たとえば、「和の要素は昔から外国から憧れられてきた。滝沢歌舞伎はブロードウェイやラスベガスのショーに勝るとも劣らない」(『読売新聞』2015年3月13日付記事)というような発言もしていた。

K-POP旋風のなかで~彼らのハイブリッドな方向性

 ただ、そうした日本らしさの追求が、いまジャニーズを試練のなかに置いている面もあるだろう。その背景にあるのは、世界で旋風を巻き起こしているK-POPグループの存在だ。

 BTSなどを見ても明らかなように、その特徴は明確なグローバル志向にある。そうなった背景として、韓国の国内市場規模の問題、それに伴う国を挙げての海外進出への取り組みがあったことなどが指摘される。

 だがいずれにしても、K-POPの世界的成功は、グローバルな展開を意識した楽曲づくり、歌やダンスのパフォーマンスによるところが大きい。その点、日本固有のエンターテインメント文化のなかで発展してきたジャニーズとは違いがある。

 そんな両者の違いは、アイドルとしての基本的なありかたにも表れている。

 K-POPのグローバル志向は、欧米流のショービジネス観に沿った完成度へのこだわり、高度なスキル志向と表裏一体だ。それに対し、日本のアイドルは、完成度よりはむしろ未完成のなかに魅力を発見する文化のなかで栄えてきた。長らく日本のアイドルファンたちは、未完成な存在が努力して成長する姿を見守ることに価値を見出してきた。

 ただ同じジャニーズのなかでも、最初に述べたようにTravis Japanには明確なスキル志向がある。その点、K-POP的だ。しかしもう一方で、リーダーの宮近海斗が今回の渡米を自ら「修行の旅」と表現していたように、日本的アイドルのエッセンスはしっかり残っていると言える。ここで「修行」とは、「成長」と言い換えられるからである。

 日本流のアイドル像をベースにしながら、磨き上げたスキルを武器に世界に打って出ようとしているTravis Japanのハイブリッドな方向性。世界メジャーデビューの決まった彼らがどのような成果をあげるかは、今後のジャニーズの世界戦略にとってひとつの試金石になるのかもしれない。


太田 省一(おおた しょういち)Shoichi Ota
社会学者、文筆家
東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得満期退学。テレビと戦後日本社会の関係が研究および著述のメインテーマ。それを踏まえ、現在はテレビ番組の歴史、お笑い、アイドル、歌番組、ドラマなどについて執筆活動を続けている。著書として『攻めてるテレ東、愛されるテレ東』(東京大学出版会)、『平成テレビジョン・スタディーズ』(青土社)、『テレビ社会ニッポン』(せりか書房)、『芸人最強社会ニッポン』(朝日新書)、『SMAPと平成ニッポン』(光文社新書)、『中居正広という生き方』『木村拓哉という生き方』(いずれも青弓社)、『紅白歌合戦と日本人』(筑摩書房)などがある。