新田 母がまだ元気だったころに一緒にテレビを見ていたら、日本伝統の死に装束のことをやっていたんです。母に「あれを着る?」と聞いたら「嫌だ」って。「だったら最期に何を着たい?」って聞くと、母が「ウエディングドレス」と答えたんです。

加藤 わ~ん、すてき!

ドレスを完成させることができなかった

介護をして初めてわかる「介護に優しくない世の中」をしっかり伝えたいと新田恵利さん
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新田 昭和一桁生まれで、ウエディングドレスを着たことがなかったんですね。だんだん母が弱ってきて、約束したドレスを用意しなければならないとリアルに考えたとき、待てよ、死後硬直があると普通のドレスは着せられないかもって……。それでいろいろと調べたら、エンディングドレスというガウン型のものがあることがわかったんです。私はハンドメードが得意なので、ウエディングドレス風のエンディングドレスを自分で作ることにしました。母の看病をしながら8割方できたのですが、仕上げたら本当に死んでしまうような気がして完成させなかったんです……。結局、母が息を引き取った後、泣きながら仕上げて、着せてあげて見送りました。

加藤 お母様に見てもらえなかったのが残念ですね。

新田 介護には悔いがないのですが、たった1つ悔いがあって、このドレスをもっと早く仕上げて母に見せてあげたらきっと喜んでくれただろうなと思うんです。何でも早め早めに、もっともっと母が元気なうちに「ママ、できたよーっ!」て笑顔で見せればよかったです。

加藤 でも、私が今までに話を聞いた誰よりも幸せなお母様だと思います。私ももっと母を大事にしようと改めて思いました。とても感動しました。ありがとうございます。

新田 こちらこそ、ありがとうございました。

取材・文/中村裕美(羊カンパニー) 撮影/北村史成

にった・えり おニャン子クラブとして人気を博す。タレント・女優・執筆業のほか、経験に基づいた介護に関する講演なども行う。著書に『悔いなし介護』(主婦の友社)がある。
かとう・あやな 2011年に加藤茶と結婚し、年の差45歳で注目を集めた。夫を支えるため介護や食事法を勉強。著書に『加トちゃんといっしょ』(双葉社)がある。