“劇場版”製作の可能性

 メディア研究家の衣輪晋一さんは、村瀬Pのこだわりの強さについてこう語る。

「作品への愛が強いため、小道具などの細部にもこだわるタイプです。手がけたドラマ『信長協奏曲』でも、小道具の素材にまでリアリティーを追求していました。予算を度外視して制作するのは会社員としては失格かもしれませんが、クリエイター寄りの方だからこそ、ここまでクオリティーの高い作品を作ることができたのでしょう」

 見逃し配信の累計再生回数で記録を更新するなど、秋ドラマの話題を独占しているものの、予算と時間をかけすぎたことで、収益面では厳しい状態だというから驚きだ。

放送されている木曜午後10時枠はこれまで視聴率で苦戦しており、“死に枠”と呼ばれていました。そのため『silent』も、地上波放送のスポンサー料はフジの看板枠の『月9』などに比べると、割安に設定されていたんです。見逃し配信で局側に入る広告料は、地上波のスポンサー料に比べるとまだまだ格安。記録を塗り替えるほど再生がされていても、村瀬Pのお金のかけ方を考えると、億単位の赤字は避けられないのでは?と言われていますね」(広告代理店関係者)

 フジテレビの動画配信サイト『FOD』の加入者の増加に貢献しているだけに、広告収入以外も含めればプラスにはなっているが……。

「大きな話題になっていることは間違いないので、ドラマの制作費の赤字分を回収するために、劇場版を製作するべきでは?という声も局内では上がっています」(前出・フジテレビ関係者)

 ドラマを映画化してヒットさせるのはフジの得意分野でもあるため、『silent』も可能性はありそうだ。

「続編などは編成にも決定権があるため、現場の意向だけでは制作できませんが、村瀬Pは『信長協奏曲』の劇場版をヒットさせた実績もありますからね。ドラマ版の終わり方次第ですが、劇場版の製作は十分考えられると思います」(衣輪さん)

 フジテレビドラマのキャスティングや収益面について問い合わせたが、

「番組制作の詳細に関してはお答えしておりません」

 記録ずくめのドラマの舞台裏は、やはり“静か”ではなかったようだ─。

衣輪晋一(きぬわ・しんいち) メディア研究家。雑誌『TVガイド』やニュースサイト「ORICON NEWS」など多くのメディアで執筆するほか、制作会社でのドラマ企画アドバイザーなど幅広く活動中