目次
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ー 本物を超える味への挑戦
Page 2
ー 試食の感想がネーミングの由来に ー カネテツ「ほぼシリーズ」
Page 3
ー 「ほぼシリーズ」の歩み

 見た目や食感、味をカニに似せたかまぼこ、通称「カニカマ」。原料はのすり身で、今やスーパーやコンビニに必ず並んでいるほどおなじみの食品となっている。

 日本で初めて開発されてから半世紀がたつなか、もはや本物のカニと遜色ない出来栄えの『ほぼカニ』を世に送り出し、話題を集めているのが、兵庫県神戸市に本社を置くカネテツデリカフーズ株式会社だ。

本物を超える味への挑戦

「2014年に発売された『ほぼカニ』ですが、開発が本格的に始まったのは2012年。当時の市場では直線型のカニカマがほとんどで、そういった従来の練り製品とは異なる“世界一ズワイガニに近いカニカマ”を作ろうという思いのもとで、商品開発プロジェクトが発足しました」

 そう教えてくれたのは、カネテツデリカフーズの開発部部長・宮本裕志さん。まずは基本に立ち返り、本物のカニと向き合うところから『ほぼカニ』の開発は始まった。

「弊社がこれまで作ってきたカニカマの枠にとらわれず、カニの特長をより捉えた新しい商品を目指したいという思いがあり“本物のカニってどんな味だっけ”という根本的なところから研究がスタートしました。

 チームのメンバーと本物のカニをひたすら食べ続けた経験は、苦しいながらもオイシイ思い出ですね」(宮本さん、以下同)

 実際にカニを食べ続けてわかったのは、カニ肉の繊維の方向や細さ、噛んだときの弾力、口の中でほろりとほどけるような食感。

 それらをのすり身で忠実に再現するために、実際の工場のラインを使って試作を100回以上繰り返した。

カニの繊維の細さや向きに着目し、本物に近い断面を実現。上が『ほぼカニ』、下が本物のカニの断面図
カニの繊維の細さや向きに着目し、本物に近い断面を実現。上が『ほぼカニ』、下が本物のカニの断面図

「細く短い繊維を斜めに重ねることで、食感は限りなく本物のカニに近づけることができたと思います。一方で、味の再現については難航を極めました。

 カニの味を理化学分析して、アミノ酸などの数値を本物に近づければ近づけるほど、なんだか素っ気ない味になってしまったんです」

 データ上は完璧なカニの味なのに、食べてみるとあまりおいしくない。商品として成立させるためには、数値の完璧な再現ではなく、みんなが思い描くカニのイメージに近づける必要があったという。

「例えば、旅行先で家族みんなと食べるカニのおいしさは、数値では測れない特別な味わいがあると思うんです。そういう食の楽しさや思い出を含めて、データだけではなく実際に舌で感じる“おいしいカニ”の味を追求していきました。

 この味わいは『ほぼカニ』が本物のカニを超えた部分かもしれませんね。和食料理人に監修をお願いした添付の『黒酢入和だしカニ酢』も、より本格的な味を演出するアイテムのひとつです」

 食感と味に加え、ビジュアル面にもこだわった。ややかすれたような色合いと形状は、一見では本物のカニと区別がつかないほどの仕上がりだ。

節の部分に向かって細くなっていくカニ脚の笹形のような形状など、細かな部分まで再現しました。自然な色着けの技術は企業秘密で、工場見学でもお見せしていない工程ですね。

 また、現在のパッケージはカニの全形をイメージしていて、トレイにはカニの脚やハサミが表現されています。

 見た目の楽しさも食体験の大切な要素のひとつなので、スーパーで本物のカニを丸ごと1杯買って帰るようなワクワク感をお届けできたらと思っています」