夢は国民的なドラマに出ること

 現在は、知的障害者の支援施設で働いている。

「7~8人の方が住まわれているグループホームで、入居者さんの身の回りのお世話や家事をしたりしています」

 そんなむろいさんには、俳優として、映画やドラマに出演したいという夢がある。きっかけは、大学時代に友人から誘われた、ドラマのエキストラだ。

「もともと、『花より男子』などの学園ドラマが大好きで、憧れもあったんです。友人が誘ってくれたのも学園ドラマのエキストラで。最初は主演俳優さんのすごく近くに配置してもらえたのですが、右手のことを話すと“やっぱごめん、後ろいこっか”と」

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【写真】「指がない」むろいのぞみさんの右手

 それでも、俳優になる道を諦めなかったむろいさん。就職後も、エキストラの募集があれば、夜勤明けに片道2時間以上かけて通ったり、オーディションに参加したりと活動を続けた。

「いいところまでいっても、最後は障害がネックで落ちちゃうことも多い。私の右手がないことで、『右手がない子がいるのは、何かの伏線のように視聴者は受け取ってしまう』と言われたこともありました。ドラマも映画も、健常者であることが前提として作られるんだな、と身に染みて感じています」

 最近では、車いすユーザーや視覚障害者など、さまざまなハンディキャップがテーマのドラマも増えてきたが、自分のように“パッと見ではわからない障害”にフォーカスした作品は、ほとんどないのではと話す。

「なので、『一目ではわからないいろんな障害がある』、『日常生活を普通にこなしている障害者もいる』といったことを発信したいと、SNSを始めました。同じ障害のお子さんを持つお母さんから、『うちの子も、のぞみさんを参考に片手生活を頑張っています』とメッセージが来たときはうれしかった。

 もちろん、俳優としての夢も諦めたわけじゃないです。いつか、大好きな朝ドラに出演したいというのが、今の大きな目標(笑)。夢も日常も障害を理由に手放したくないって、そう思っています」

むろいのぞみさん
2021年からSNSで自身の先天性四肢障害について発信。知的障害者のグループホームで職員として働く傍ら、障がい者モデル媒体「porte」の新人モデルに選ばれるなど、メディアでも積極的に活動をしている。(インスタグラム@guuuu_non)