目次
Page 1
ー 相続トラブルは財産の少ない家庭でも起きる ー 子どもがいない夫婦でも相続トラブルに
Page 2
ー 「これで安心」は大間違い!遺言書の落とし穴
Page 3
ー 大切なのは家族の絆を守ること

実は相続トラブルというと、お金持ちの家庭のものと思われがちですが、財産総額5000万円以下の家庭でよく起きているのが現状です

 そう語るのは、ベンチャーサポート相続税理士法人代表税理士の古尾谷裕昭さん。大相続時代といわれる昨今、財産相続は富裕層だけの話ではないようだ。

相続トラブルは財産の少ない家庭でも起きる

「最高裁の調査によると、遺産分割調停の約75%が相続財産5000万円以下の案件。富裕層では相続税についてのトラブルが多いのに対し、一般家庭では遺産分割の割合や金額で争うケースが激増しています」

 当初は円満に解決できると思っていても、相続の話し合いが始まると予想外の展開になることも少なくない。なぜ、そのようなトラブルが起きてしまうのだろうか?

相続トラブルの一番の原因は、当事者同士の『想い』の違いです」と、公認会計士・税理士の清田幸佑さんは話す。

親と同居して介護に尽くした人は『自分が苦労したのだから多めにもらって当然』と考え、別居していたきょうだいは『家に住めるだけでも得をしているのだから同じか少なめが公平』と思うなど、価値観のズレからトラブルになりやすいのです

 お互いの主張を譲らないと、なかなか相続が進まないばかりか、心理的なしこりとなって、精神的につらい思いをすることに。

「相続人同士の関係性の希薄さは大きな要因です。普段から会話のないきょうだいや親族ほどトラブルになりやすい。代襲相続(親が亡くなっている場合に孫が相続すること)で甥(おい)・姪(めい)が関わるケースなど、相続の場が初対面というケースも少なくありません」

※写真はイメージです
※写真はイメージです

子どもがいない夫婦でも相続トラブルに

 子どもがいない夫婦の相続もよくある相続トラブルだと清田さんは話す。

子どもがいない夫婦の場合、配偶者と相続順位第2位の親が相続することになります。この際、配偶者と親の仲が良好でない場合はトラブルに発展しがち。

 例えば、嫁姑(よめしゅうとめ)問題があった場合などには、夫の遺産を嫁と姑が取り合うことになるので、争いは激しくなる傾向があります

 そして、財産が不動産の場合、泥沼化するおそれも。清田さんは不動産の相続で、もめごとが起きる理由は大きく2つあるという。

「1つは不動産の分割方法でもめること。不動産を1人だけが相続する、代償金を支払う、売却して現金分割する、など方法によって不公平さが生じます。もう1つは不動産の評価方法でもめること。時価や相続税路線価など評価方法が複数あり、意見が折り合わないことがあります」

 相続の問題はきちんと解決しておかないと、「あったはずの実家や財産が消えた」となる可能性も。

主に2つの状況があります。1つは、相続人がいない場合や相続放棄をした場合です。もう1つは、遺産を使い込んだり、隠したりした場合です」(古尾谷さん)

 使い込みは預貯金が使い込まれるケースが典型だが、時には不動産が勝手に売られている事例も存在するそう。

相続財産が5000万円以下の案件全体の約75%
相続財産が5000万円以下の案件全体の約75%