とはいえ、両親から受けた教育を、自身の子どもたちにそのまま実践しているわけではない。
「例えば母は、おしゃれは不良の始まり、という考えでした。僕の青春時代の流行はいわゆる“ツッパリ”ファッションだったから気持ちもわからないでもないんだけど(笑)。反対に僕は、子どもたちの髪形や服装は本人の自由にさせています」
誰しも踏み込まれたくない一線がある
何より、子どもたちのプライバシーを尊重するように心がけているという。
「子どもたちにスマホを持たせたのは中学生からですが、親であろうと中身を確認するようなことは一切しない、と最初から告げていました。誰しも踏み込まれたくない一線はあり、小さな隠し事などは成長するうえで自然なことだからです」
決して野放しというわけではない。親子間できちんとルールを決め“破ったときだけ親がスマホの中身を確認する”と、取り決めを交わした。
「子どもの小さな嘘や隠し事が犯罪につながるのでは、と心配する方もいるけれど、それは大きな勘違いだと僕は思う。子どものプライバシーをすべて把握しようとして、親子の信頼関係を失うほうがよほど問題です」
つい最近、大学生の娘とふたりで外食をしたときのこと。話が弾み、将来の結婚についての話題になったという。
「僕の唯一のアドバイスは、旦那さんのスマホの中身だけは絶対に見ちゃいけない、ということ。それを伝えると娘は、自分もそのつもりだ、と。夫が浮気をしていたらもちろん嫌だけど、知らなければしていないのと一緒だからと言ったんです。
彼氏がいたこともないのに、こんな考え方ができるんだ、ってびっくりしてね(笑)。それはやはり、きちんと個人を尊重する親子関係から生まれた価値観だと思う。たとえ夫婦であっても一線を引くという考えが、自然と身についているんだなと驚きました」
秋川の子育てがユニークなのは、いわゆる“マニュアルどおりの育児”ではないからだ。例えばそれは、子どもたちのお受験の取り組み方にも表れている。
「そもそも、うちの家内は小学校受験に反対でした。でも僕は自分の子どもの特性を見極め、小学校受験が豊かな人生経験のひとつになると考えたんです。それで夫婦で話し合いを重ね、受験に挑戦することに決めました」
お受験対策として塾に通い始めたが、小さな違和感を覚えることがたびたびあった。
「塾では、言葉遣いやマナーにとても厳しいんです。でも僕は、子どもが妙に大人ぶった言動をする必要はないという考え方。うちの息子は口が悪いほうだったけど、あえて塾の言うことを聞かず(笑)、そのままにしておくことにしました」