とはいえ、いじめはこの世から決してなくならない、と考えている。
「だからこそ、いじめっ子をどうにかするのではなく、いじめられたときに強い対応ができる子に育てることが重要なんです。いじめっ子の家庭は、夫婦仲がよくないパターンが多いことも事実。自分の子どもをいじめっ子にしないために、せめて子どもの前では夫婦ゲンカを見せないようにしてほしいとも思います」
子どもがしてほしくないと思う行動は自分もやらない
子育てとは、親の背中を見せることだと語る秋川。偉大なオペラ歌手である父親の背中を見て育った長男は3歳からピアノを始め、ピアニストの夢を叶えた。長女はオペラ歌手を目指しつつ、大学では司法試験の勉強も続けている。
「僕自身もまだまだ成長の途中。今は9月のソロコンサートに向け、練習を重ねているところです」
声と体力の維持のため、毎日2時間の発声練習と、3キロのランニング、水泳、筋トレを欠かさない。また、40歳を過ぎてから始めた木彫りの彫刻は趣味の域を超え、これまで二科展に4回入選。彫刻家としての才能も発揮する。
「彫刻は毎日6時間。今や、発声トレーニングよりも長い時間を費やしています(笑)。二科展に毎年出品することを目標としており、今年8月締め切りの応募作品は、すでに完成させています」
歌手としての日課と、彫刻の制作活動だけで1日9時間。ストイックな父に感化され、最近では子どもたちや妻も一緒にトレーニングに取り組むようになった。
「僕だって、決して完璧な父親ではありません。でも子どもがしてほしくないと思う行動は、自分もやらないよう心がけています。子育てってそんなふうに、自分を顧みる作業でもあると思うんです」
子育てや教育に関する自身の体験を惜しみなく公表することに決めたのは、社会貢献の意味合いが大きい。
「この国では、子を持つことが負債ともいわれ、少子化が大きな課題です。経済的な支援はもちろん必要ですが、もっと根本的な、子育てに対する価値観の問題もあると思うんです。
自分の体験を伝えることで、子育てって楽しいんだ、素晴らしいことなんだ、と思う人が増えてくれたらとてもうれしい。大人たちが子育てや教育に本気で力を入れれば、日本の将来はもっと明るいものになると信じています」
取材・文/植木淳子