“継承”がテーマの慰霊の旅
1975年に当時、皇太子ご夫妻だった上皇ご夫妻が皇室として戦後初めて沖縄を訪問されたが─。
「皇太子同妃時代に『ひめゆりの塔』を訪れた際、火炎瓶が投げられる事件がありました。不測の事態を危惧し、反対の声もあったのですが“何があっても行く”という上皇陛下の強いご意志で実現した訪問でした」(山下さん)
沖縄に強い思いを寄せ続けた昭和天皇と上皇ご夫妻。その思いは、両陛下そして愛子さまに引き継がれていると山下さんは続ける。
「今回の沖縄訪問は慰霊の旅ですが、“継承”というテーマも感じました。陛下は戦争を体験しておられないからこそ過去の歴史的事実を忘れず、次の世代に伝えていくことが重要だとお考えのはずです。若い愛子内親王殿下の同行は、次の世代に“受け継いでいく”という姿勢を両陛下と愛子内親王殿下がともに行動で示されたのだと思います」
天皇ご一家が抱かれる“継承”というテーマは交流した人々にも強く印象に残ったようだ。1日目にご一家が『沖縄平和祈念堂』を視察された際、現場に立ち会った『公益財団法人沖縄協会』専務理事の新垣昌頼さんは、こう話す。
「祈念堂内にある、『平和祈念像』をご覧になられたお三方は、作り手が込めた平和への強い思いに深く感動されたご様子でした。以前いらしてくださった上皇ご夫妻の思いを引き継いで、ご訪問くださったのだということが伝わり、大変ありがたく思いました」
さらに、前出の小桜の塔で、ご一家の案内を担当した比嘉さんも次のように話す。
「塔の前の祭壇で、両陛下に続いて愛子さまも深々と頭を下げておられ、そのお姿から“歴史を引き継ごう”というお覚悟が伝わりました。“沖縄に寄り添います”と安易に語る政治家はたくさんいますが、お三方はそれとは比べ物にならないほど、きちんと学び、引き継がれているのだと強く感じました。ただの形式ではなく、沖縄に寄り添ってくださるお心の深さに感動いたしました」
愛子さまは今後も沖縄に心を寄せ、歴史を次世代へとつながれることだろう─。