睡眠不足はNG!質のよい睡眠で骨貯金
骨にとって睡眠も大切なのだとか。
「2019年の報告では、短時間の睡眠が骨密度に影響を与えることがわかっています。特に1日5時間以下しか寝ていない人は、7時間以上寝ている人に比べて明らかに骨密度が低かったんです」
そのリスクの大きさは驚くべきものだという。
「股関節で22%、脊椎では28%も骨粗鬆症になるリスクが高かったのです。この骨粗鬆症の程度というのは約1年分の骨の老化に相当します」
睡眠不足が続くと年齢以上に骨が老化していくことになるという。石黒先生は7~8時間の睡眠確保のためには、生活習慣の見直しが必要だと話す。
「例えば朝6時に起きなければいけなくて7〜8時間寝ようと思ったら、10時くらいには寝なきゃいけないことになります。それくらいに寝るためにはどういった生活スタイルを送るべきかを逆算して考えていくことも重要になってきます」
転倒防止の筋力トレーニング
冒頭でも触れたが、骨折を防ぐ最大の対策は「転ばないこと」だ。
「転ばないためには、しっかりと運動することが大事です。ただ有酸素運動やウォーキングなどはあまり骨の健康には影響がありません」
では、どんな運動が効果的なのだろうか。
「どちらかというと負荷をかけるレジスタンストレーニング、いわゆる筋トレをすることが骨を強くすることになります。骨に対してしっかりと負荷をかけるような運動が必要です」
筋力がつくと転倒リスクが減るだけでなく、骨への適度な負荷が骨密度アップにもつながるという。高齢になっても続けられる適度な負荷の筋トレを日常に取り入れることが重要だ。

「骨の健康に対する考え方は、単に骨の密度の数字を上げればいいのではなく、骨折しない身体づくりという広く大きなテーマで骨というものを見つめてほしいと思います。
骨の密度の数字が少し低いからとか、薬で少し上がったからといって一喜一憂するのではなく、本当に大切な骨のケアを始めていってください」
骨粗鬆症は「骨密度が低い」という状態であり、必ずしも病気ではないと話す。
「薬に頼る前に、食事、睡眠、運動で骨の健康を維持することが大切です。今日からできる骨の健康習慣を始めてみましょう」

教えてくれたのは……石黒成治先生●外科医。国立がん研究センター中央病院で大腸がん外科治療のトレーニングを受け、名古屋大学医学部附属病院、愛知県がんセンター中央病院、愛知医科大学病院に勤務。現在は健康スクールで予防医療を推進するとともに、登録者数50万人以上のYouTubeチャンネル「Dr Ishiguroの健康スクール」にて情報発信中。