続いての質問は、「人生で一番の大失恋をしました。おふたりの忘れられない人や言葉を教えてください」

:僕はバイトをしてたとき、全然ダメで。当時付き合っていた彼女から「大丈夫、君面白いもん。小説でも書けば?」って言われたこと。結局、十何年たってから書きましたけど、そういう言葉って、何よりもうれしい。救われるというか。

:以前、ちょっと変な距離感の女性がいて、よく飲んでたんですけど、俺は好意を持ってたんですね。そうしたら、その人から「あなたと話してると時間溶ける」とメールが来て、俺、喫茶店で泣いちゃって。

:メールなんだ!(笑)

:なんかそれで、じゃあ全部いいやってなるくらいの救いになって。

:面白いとか言ってもらったら、それだけでいいですよね。生きていける。なんか、それって目減りしないじゃないですか?

:例えば、本が売れたとか数字も大事だけど、感覚の部分を褒められるとすごい安心しますよね。

:「面白いかわからないけど、でも自分の中では意味がある。だけど、誰が読むの?」みたいなこと書いて、読んだ人が自分と近しい何かを思い出したとか言ってもらえると、本当に意味があったな、答えが出たなって。そういう作品を作れるとうれしいし、ホッとします。

:映画でも、ある世代向けに……みたいなことがあるけど、結局、年代じゃなくて一人ひとり違うじゃないですか。たった一人に向けたほうが強度が上がる、ということありません?

 万人に好かれるものって、表現もどんどん薄くなっちゃう難しさもあって。俺は本当に好きな人がいて、一方で受けつけない人もいるものが作りたいんですよ。

 そうしないと5年後、10年後に特別にならないというか。だから、この本を読んでて思ったのは、燃え殻さんはさらけ出す人なんだなって。

:自分の中でも忘れてしまうこともあるんですけど、それでも、ある食べ物を食べたときに思い出す、忘れられない一冊にしたいなと思ったから、「もしかしたら書くことで返り血を浴びちゃったりするかもしれない」と思いながらも「やっちゃったほうがいいかな?」って、さらけ出しました。

今泉力哉●1981年福島県生まれ。大学在学中から映画製作を始め、2010年『たまの映画』で商業映画監督デビュー。映画やドラマ、ミュージック・ビデオなどを手がけ、主な監督作品に『愛がなんだ』『街の上で』『アンダーカレント』などがある。脆く弱い部分を持つ登場人物の心の揺れ動きや孤独感などを丁寧に描く作風で多くの支持を得る。
今泉力哉●1981年福島県生まれ。大学在学中から映画製作を始め、2010年『たまの映画』で商業映画監督デビュー。映画やドラマ、ミュージック・ビデオなどを手がけ、主な監督作品に『愛がなんだ』『街の上で』『アンダーカレント』などがある。脆く弱い部分を持つ登場人物の心の揺れ動きや孤独感などを丁寧に描く作風で多くの支持を得る。
【写真】プライベートでは飲み友達だという燃え殻さんと今泉さん

今泉力哉●1981年福島県生まれ。大学在学中から映画製作を始め、2010年『たまの映画』で商業映画監督デビュー。映画やドラマ、ミュージック・ビデオなどを手がけ、主な監督作品に『愛がなんだ』『街の上で』『アンダーカレント』などがある。脆く弱い部分を持つ登場人物の心の揺れ動きや孤独感などを丁寧に描く作風で多くの支持を得る。

燃え殻●1973年神奈川県生まれ。テレビ番組の小道具制作会社勤務を経て、2017年にネット上で連載した『ボクたちはみんな大人になれなかった』で小説家デビュー。著書に小説『これはただの夏』『湯布院紀行』、エッセイ『それでも日々はつづくから』『夢に迷ってタクシーを呼んだ』『明けないで夜』など。作品が次々と映像化、舞台化されるなど、今注目の作家。
燃え殻●1973年神奈川県生まれ。テレビ番組の小道具制作会社勤務を経て、2017年にネット上で連載した『ボクたちはみんな大人になれなかった』で小説家デビュー。著書に小説『これはただの夏』『湯布院紀行』、エッセイ『それでも日々はつづくから』『夢に迷ってタクシーを呼んだ』『明けないで夜』など。作品が次々と映像化、舞台化されるなど、今注目の作家。

燃え殻●1973年神奈川県生まれ。テレビ番組の小道具制作会社勤務を経て、2017年にネット上で連載した『ボクたちはみんな大人になれなかった』で小説家デビュー。著書に小説『これはただの夏』『湯布院紀行』、エッセイ『それでも日々はつづくから』『夢に迷ってタクシーを呼んだ』『明けないで夜』など。作品が次々と映像化、舞台化されるなど、今注目の作家。

『この味もまたいつか恋しくなる』(主婦と生活社)

『週刊女性』に連載された『シーフードドリアを食べ終わるころには』に書き下ろしを加えて書籍化。

 浅煎りコーヒー、生姜焼き定食、シーフードドリア、チャーハン、おにぎりと味噌汁、シェフの気まぐれサラダ、冷えた焼きそば、ミートソースパスタ、餃子と高級鮨、卵かけごはん、サッポロ一番塩らーめん、金目鯛の煮付けなど、さまざまなメニューにまつわる味の記憶と、その食べ物から思い出されたちょっぴり切ない物語を展開する。燃え殻さん自身の味の好みに迫るコラム「恋しくなる味Q&A」も収録。

燃え殻さんの新刊『この味もまたいつか恋しくなる』(主婦と生活社)※画像をクリックするとAmazonの商品ページにジャンプします。

取材/成田 全