絶対に“NO”は言わずあらゆる要望に応える

 レンタルの申し込みを受けると、まずは時間をかけてカウンセリングを行う。

「できること、できないことを伺い、障害に合わせて身頃の上下や肩を切ったり、チューブが通るように穴をあけたり、トイレで困らないように後ろを切ったりと着物をお直しします。

 半襟やつくり帯はワンタッチでつけられるように工夫していますが、音に過敏な方もいるので、ボタンがいいのか、テープがいいのか、実際に音を聞いてもらって確認。時間無制限で納得するまで打ち合わせを行い、一つひとつ決めています」

 さらに、どんな障害の方でも短時間で家族が着付けられるように工夫をしている。

「私たちのサロンは長崎県の佐世保にあり、こちらに来られる方にはわれわれスタッフが着付けを対応しますが、遠方であったり、外出が難しかったり、家族以外の他人が関わるのが難しかったりする場合が多いです。だからこそ、本人または家族が着付けることを想定しています」

38歳、女性。成人式に出席するために着物を着たが、着付けするのに時間がかかり、式に到着したのは終了間近。成人式を思う存分楽しむことができず心残りがあった中、「こころ」に出合いオーダーメイドの依頼を決意
38歳、女性。成人式に出席するために着物を着たが、着付けするのに時間がかかり、式に到着したのは終了間近。成人式を思う存分楽しむことができず心残りがあった中、「こころ」に出合いオーダーメイドの依頼を決意
【写真】「人工呼吸器が必須」35歳女性が『こころ』で着物レンタル

 多動でじっとしていられない障害もある。着付け初心者の家族でも短時間で仕上がるように工夫した。

「ストップウオッチ片手に何度も試行錯誤。どんな障害の方でも、だいたい3~5分あれば着付けられるように作っています。当日のために着物に慣れたり、練習が必要な人もいるので、レンタル期間は9泊10日と長めに設定しています」

 オーダーメイドの良さは、おしゃれに妥協しなくてよい点にもある。

「どんな着物を着たい、着せたいから始まり、色や柄選びだけではなく、ラメだったり、襟にレースやパールをつけたりと好みに合わせてカスタマイズできます。それらの美の要望に応えるのが、とても楽しいです」

 着物に合わせた小物だけでなく、家で撮影できるように背景や小道具の貸し出しも行う。七五三、卒業式、成人式などの晴れ舞台を美しく着飾ることで、家族、そして本人の喜びとなり、また、その日の“記念写真を見ることが励みになっている”との声が多く届けられる。成長の記念として、毎年、着物をレンタルして写真撮影を行う家族もいるそう。