リサーチ会社の調査でも、慢性的な胃の不調を感じる人の割合は、36歳、41歳、50歳といったタイミングで急増する傾向がみられた。若い頃は平気だった生活習慣が、知らず知らずのうちに胃に負担をかけている可能性がある。
胃バテを解消するには手軽な“胃活”から
では、つらい「胃バテ」を乗り切るためには、どのような対策が有効なのだろうか。
胃バテを解消するための食習慣には「冷たいものや脂っぽいものをひかえる」「よく噛んで食べる」「食後30分は横にならない」といった対策があるようだが、三輪先生は、特に「朝食に胃の負担をかけない食事をとること」の重要性を強調する。
「朝起きて食事をすることは、1日の生活リズムを整えるうえで極めて重要です。朝食を抜くと、自律神経が乱れることで、胃の不調につながります。シリアルでも果物でもいいので、何か口にすることが大切です」
特におすすめなのが、胃に負担をかけにくいヨーグルトだという。
「ヨーグルトは、夏の暑い時期でも食べることができ、タンパク質が豊富で栄養面でも消化の面でも優秀な食材です。また、特定の乳酸菌は胃の不調を改善することもわかっています」(同)
カロリーが低く、朝食やおやつなど場面を選ばないヨーグルトは、毎日継続して食べることで特に効果が期待できるという。
前述の調査では、慢性的な胃の不調を抱える人の4人に1人が朝食を食べていない実態も明らかになっており、胃バテと「朝食抜き」には相関があるといっても過言ではないだろう。また、「胃バテ」対策には、鼻から息を吸って口から吐く「深呼吸」や、普段の睡眠時の姿勢も効果があるという。
逆流性食道炎がある場合は、左を下に。逆流のない胃もたれの場合は、胃の出口である右を下にすると消化が促進されるという。どちらもある場合は上向きで寝るが、その際に枕などで上半身を高くし、15〜20cmほどの高さにすると理想だという。
胃の不調対策にも「ヨーグルト」が上位に

慢性的な胃の不調を感じている人が、実際に効果を実感した対処法を調査したところ、1位は「胃薬を飲む」(34.7%)、2位は「横になって休む」(20.2%)であった。そして注目すべきは、3位に「ヨーグルトを食べる・飲む」(17.1%)が入ったことだ。
胃の不調への対処として、胃薬に頼りたくないと考える人も少なくない。調査では、胃薬を使用しない理由として「薬にお金をかけたくない」「薬に頼りたくない」「効果を感じられない」といった意見が上位に挙がり、特に40代以降でその傾向がみられた。
「慢性的な胃の不調は、病院にかかって治療を受けることも大切ですが、日々のセルフケアや食習慣がとても有効です」(同)
胃薬は症状緩和に有効な場合も多いが、頼りすぎたくないと感じる人にとって、ヨーグルトを食生活に取り入れることは、胃をいたわるための手軽で有力な選択肢となる。
厳しい夏を元気に乗り越えるために、まずは自身の「胃」に意識を向けてみてはどうだろうか。日々の食生活にヨーグルトのような手軽なケアを取り入れることが、つらい「胃バテ」を乗り切る第一歩になるはずだ。
お話を聞いたのは
三輪 洋人(みわ ひろと)医師 川⻄市立総合医療センター総⻑
1982年鹿児島大学を卒業後、順天堂大学消化器内科で23年間にわたり診療・研究に従事、米国ミシガン大学内科へも留学。2004年には兵庫医科大学消化器内科主任教授に就任、2014年同大学病院副病院⻑、2016年からは同大学理事、副学⻑を務め2022年3月退職。同年9月より現職。専門は胃腸を中心とした消化器内科学。2022年9月からはYouTube「Dr.三輪洋人の健康チャンネル」を開設。幅広い世代に健康情報を発信している。2025年7月14日「胃の不調の原因と対策 胃活の教科書」(毎日新聞出版)を好評発売中。