続けていれば、必ず評価される

 会社を立ち上げて36年。企業の30年生存率が0・02%ともいわれる中、かづきさんは「ほそぼそとやってきただけなのに、奇跡みたい」と笑う。

「主婦だった私は、ビジネスなんて全然わからなかったし、借金もできなかった。夫からの援助も一切なし。それでも、時代の流れとスタッフの支えがあって、ここまでこられたんです。感謝しかないですね」

 秘訣があるとすれば、「とにかく続けたこと、それだけ」と言い切る。

「どんなに小さなことでも続けていると、評価してもらえます。どんな大きな花火を上げても途中で終わったら、やっぱりねって言われちゃう。仕事もボランティアも、やると決めたらライフワークとしてずっと続ける、それが大事だと思うんです」

 30歳で美容学校に入った当時、周囲の目は冷ややかなものだった。

「いい年して何考えてるの?と言われました。でも2年後には『まだやってるの?』、5年後には『よく続くわね』、10年後には『私にもメイク教えて』と変わっていった。人の見方なんて、そんなもの。どう思われるかより、どう生きたいか。人生の主役は、いつだって自分なんです」

 そう話した後、ポツリとこう付け足し、目を細めた。

「仕事一筋の人生で、気づいたら、本名・内田嘉壽子の友達はほとんどいなくなっていたの。かづきれいことしての仲間は増えたけれどね」

 息抜きは書道や華道に没頭したり、孫娘と語らうことだという。そして、最後にこう語ってくれた。

「私はとにかく人の顔が好き。目鼻立ちよりも笑顔に惹かれるんです。ご高齢の方のきれいな笑顔には、人生の素晴らしさがにじみ出ている気がしますよね。私の憧れです。

 そしてとにかくメイクも大好き! いつか『ご臨終です』なんて言われても、棺桶をのぞき込んできた人の眉がボサボサだったら、手が伸びちゃうかもしれないわ~(笑)」

「赤デメキン」と呼ばれた少女は、やがて幾千もの顔と向き合い、涙を笑顔へ変える“魔法のメイク”を生み出した。七十の齢を重ねた今もなお、最前線に立ち、生きる力を届けている。

<取材・文/森きわこ>

もり・きわこ ライター。東京都出身。人物取材、ドキュメンタリーを中心に各種メディアで執筆。13年間の専業主婦生活の後、コンサルティング会社などで働く。好きな言葉は、「やり直しのきく人生」