また摂食障害では、食べたものを意図的に嘔吐したり、下剤を乱用することで体重の増加を防ぐ行動がみられることがある。これらも非常に危険な行為だ。
やせることが唯一のアイデンティティーに
「胃液や腸液とともに体内のカリウムが失われ、低カリウム血症などの電解質異常を引き起こすことがあります。命に危険な不整脈の原因にもなるため、注意が必要です」
命まで奪いかねない摂食障害。発症の原因はひとつではなく、複雑に絡み合っている。
「完璧主義などの性格傾向のほか、家庭内や学校内での孤立によるストレス、いじめなどによる心の傷、自閉スペクトラム症などの発達障害、体形を強く意識するモデルやバレリーナ、アスリートなどの職業が関係することも。また、家族に摂食障害の方がいる場合は、そうでない場合よりリスクが増すこともあります」
見た目や学力を他人と比較し「自分はダメだ」と思い込むなど、自尊感情や自己肯定感の低さが過度な食事制限を引き起こすこともあるという。
「ダイエットが大きな成功体験となり、やせることが唯一のアイデンティティーとなってしまうのです。肥満度を表す国際的指標・BMIの数値で表すと、18.5未満で“やせ”、17未満では中等度または重度の低体重とみなされ、15未満になると入院が推奨されるほどの危険な状態です」
BMIは、体重(kg)÷{身長(m)×身長(m)}で算出される。身長160cmの人が体重42.0kgであった場合、BMI16.4。先の基準をあてはめると、中等度の低体重となる計算だ。意外に思う読者も多いのではないだろうか。
日本肥満学会の調べによれば、日本は先進国のなかでも特に低体重の若い女性の割合が高いとされている。