好みのタイプとはいえ、素性も知らない女性に執着できるものか。首を絞めてから告白するのも異様すぎる。思考の歪みとは何なのか。
“今度はうまくやろう”とレベルアップしたつもり
犯罪者心理に詳しい新潟青陵大学大学院の碓井真史教授は「心理学では“認知の歪み”と言います」としたうえで次のように話す。
「ストーカーにはさまざまなケースがあります。元恋人や元夫が復縁を迫ってしつこく追いかけたりしますが、街中でたまたま見かけて好意を持ち、名前も知らないのに執着することもあり得ます。認知の歪みがあると、嫌われるような行動でも“相手もそれを待っているはず”などと自分に都合よく考えてしまうのです。女性に危害を加えるのは、このタイプが多い。女性を思いどおりにしたいという支配欲が強いのです」
コミュニケーション力を評価されていたというから、普通に声をかければよかったのではないか。
「そうしなかったのは、いくつかの可能性が考えられます。経歴や条件を書き込むようなマッチングアプリには自信がなかったのかもしれません。あるいはストーキング自体を楽しんでいた可能性もあります。被害者の勤務先周辺を何日もうろついて出退勤を見るなど、まるでゲームを楽しんでいるかのようです」(碓井教授、以下同)
5年前はつきまとうだけだったのに、3年前は首を絞める暴行に至り、今回は刃物で刺すまでエスカレートした。
「刃物で脅せばおとなしく話を聞いてくれるのではないか、と考えた可能性はあるでしょう。過去の失敗を踏まえてゲーム感覚で“今度はうまくやろう”とレベルアップしたつもりだったのかもしれません。これは罰金や実刑判決では治りません。治療する必要があったと思います」
夏休みをフル活用した身勝手で残忍な犯行。2022年の事件で実刑判決だったとしても刑期満了しているほか、保護観察がついていたとしても犯行を防げた保証はない。再犯防止に向けた治療やカウンセリングを受けていれば……と考えずにはいられない。