目次
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ー 『あんぱん』ツッコミどころが多いポイント
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ー もうちょっと詳しく見たかった

 

 半年間、好評を博してきた『あんぱん』もいよいよ最終回を迎える。でも細かく見ていくと、ちょっとツッコミたくなるところも、なくはなかった。そこで半年間楽しませていただいた視聴者の一人として、愛を込めて総括をさせていただきたい。

『あんぱん』ツッコミどころが多いポイント

2025年前期の朝ドラ『あんぱん』でヒロインの妹を演じる原菜乃華
2025年前期の朝ドラ『あんぱん』でヒロインの妹を演じる原菜乃華

 一番ツッコミどころが多いのは三女のメイコ(原菜乃華)。

 特に筆者が気になっているのは、終戦後にのぶ(今田美桜)と嵩(北村匠海)が結婚することになり、女性陣が集まったシーンだ。千代子(戸田菜穂)や羽多子(江口のりこ)が亡き夫に惚れ込んでいたとのろけると、メイコが蘭子(河合優実)に「蘭子姉ちゃんはどうながで?」と聞くのだ。

 私はこのセリフを聞いた時、「戦争で豪(細田佳央太)を亡くした蘭子に何てことを聞くんだ!」とヒヤッとしたのだが、みなさんはどうだったろうか。当の蘭子は「うちは豪ちゃんに一生分の恋をした」と答えるのだが、自分から言うのならまだしも、戦争で大切な人を亡くした女性にこんなことを聞くのは、いくら酒に酔っていたとはいえデリカシーがないように感じたのだが…。

 他にも「のど自慢」の予選で、健太郎(高橋文哉)の姿を見た途端に歌が止まってしまったり(上ずったりするならまだしも)、嵩が喫茶店で女性編集者と打合せするのを見かけて浮気だと勘違いしたり……。役説明にある「天真爛漫」だけではちょっと腑に落ちないような言動を散見したように思う。

 のぶに関しては終盤、「うちは何者にもなれんかった」と心情を吐露するシーンが胸を打ったが、嵩の「のぶちゃんがいなかったら、今の僕はいないよ。のぶちゃんはそのままで、最高だよ」という言葉で立ち直っていた。でも嵩はこの時点で、本業の漫画は売れてないとはいえ、作詞などで「何かをなした」段階ではあった。そういう夫に、この言葉をかけられ、のぶは素直に受け止められたのか。最終的には「嵩を支えていこう」と思えたとしても、もうワンクッションあっても良かった気がする。

 そして、のぶや羽多子らがことあるごとに連発していた「たまるかー」。

 朝ドラのヒットの法則である主人公の口癖は、『あまちゃん』の「じぇじぇじぇ」がはしりで、『あさが来た』の「びっくりぽん」などが続いた。だが、子供も大人も「じぇじぇじぇ」と言っていたのと違い、『虎に翼』の「はて?」は思ったほど流行らなかったし、「たまるかー」は私の周りで使っている人を見たことがない。

 原因のひとつに、「たまるかー」という言葉の使い方が今一つわかりにくいことが挙げられる。関東の人間からすると「たまる」という音から「こりゃ、たまらん」みたいなネガティブな意味かと思いがちだが、実際には驚いたりびっくりしたのは全部「たまるかー」に当てはまるらしい。そうした齟齬もあって、今一つ使用されなかったのもあるが、視聴者の中には「また流行らそうとしてるな」という気持ちもあったに違いない。

「厳しい母親(または祖母)」もヒットの法則としておなじみだが、こちらは松嶋菜々子が最後までツッパっていて、でも嵩の出征シーンなど要所要所で見せ場があって良かった。

 ただ、いずれにしても、視聴者も朝ドラ慣れしてくるので、ヒットの法則がいつまでも万能とはいかないということだろう。