日本より海外のほうが安い
「日本の緊急避妊薬は、海外の事例と比べても価格がかなり高いと指摘されています。European Consortium for Emergency Contraception(ECEC)は今年5月、日本政府に対し、緊急避妊薬に関する書簡を送付しました。その中で、日本に緊急避妊薬を安価で提供するように求めるとともに各国における1錠あたりの価格例が示されており、最も安価なフランスでは約7米ドル(1071円)、最も高いノルウェーでも21米ドル(3213円)にとどまっています。さらに、海外では無料で配布されている国や地域もあります。こうした状況を踏まえ、今回、日本が設定した7000円から9000円という価格は高すぎるのではないかとの批判があがっているのです」
一方で、この価格設定を肯定的にとらえる意見もある。その理由として、あまりに安価にすると“乱用を招くおそれがある”という懸念からだ。緊急避妊薬がまだ十分に一般化していない日本では、こうした意見も含め、情報や認識が錯綜している。
「緊急避妊薬の市販化は、女性のからだの自己決定権、もしくはSRHR(性と生殖に関する健康と権利)の中で、大きな前進だと思います」
そう話すのは産婦人科専門医の稲葉可奈子先生。今回定められた緊急避妊薬の市販の制度について話を伺った。
「年齢制限や保護者の同伴が不要になったことは、良いことではないでしょうか。海外でも多くの国ですでに実施されており、理にかなっていると思います。薬剤師の前での服用を義務付けたことに関しては、プライバシーの観点から批判もありますが、プライバシーが守られる場所を確保できる薬局でしか販売できないので、心配しすぎる必要はありません。緊急避妊薬はより早く飲む方が効果的。現に私が処方する際には、診察室で“はやくのみたいですよね、今のんでもいいですよ”、と声をかけています。やはり、緊急避妊薬を悪用することへの懸念もあるので、その対策として面前服用が良いのではないかと考えています」
今注目されている価格に関する議論について、専門家の立場から話を聞いた。
「市場原理からすれば、適正な価格設定だと思います。市場規模と開発コストを考慮すると単価が高くなってしまうのは仕方のないこと。一方で、自己負担額はその金額で良いのか、という別の問題もあります。やはり7000円を超えるのはかなりの金額で、そこがハードルになってしまう方もいると思います」
海外と比較しても高いと言われる日本。この価格設定は社会問題の意識の差だという。











