エルザ動物クリニックでの治療によって元気になった子猫は「真綿」と名づけられ、のびのびと猫らしい暮らしを送っていく。
保護猫の一匹の名前
「以前、鴨川に農場を持ち、自給自足の生活をしていたことがあります。当時、敷地の近くに置き去りにされた4匹の白い子猫を保護して飼いました。そのうちの一匹の名前が“真綿”なんです」
第二話「それは奇跡でなく」には、持病のある70代の女性と推定14歳の年老いた中型犬が登場する。加齢による症状に苦しむ愛犬を前に、女性は安楽死というつらい決断を下したのだが─。
「愛犬が病気で苦しみ安楽死の日を決めたものの、その前日に眠るように亡くなったという実際のお話が、この物語のヒントになりました。動物というのは私たちが思っている以上に、人間のことも言葉もわかっていると思うんです。
動物同士は鳴いて意思の疎通をすることはほとんどないですし、言葉に頼るしかない人間のことを『まったく、口をきかないとわかんねぇのか、おまえらは』と思っているような気がするんですよね」
物語の終盤には、女性が次のように語る場面がある。
《夜通し叫び続けるほど苦しみ抜いている最中でさえ、ロビンは私のことだけは気遣ってくれました。その身体を粗末に扱ったりすれば、次に会ったときに顔向けできませんものねえ……。》
「2018年にいちばん大切な猫のもみじを見送りました。そのとき、『この子がこれだけ私を愛してくれたのだから、この子がいなくなっても自分を大事にしなければいけないな』と思ったんですね。だから、この場面を書けてよかったと思っているんです」
第五話「見る者」では、モンゴルで過ごした北川院長の少女時代が描かれている。当時の院長の相棒はバトゥという名の馬だった。
「私は以前、馬と騎手が協力して160キロを24時間以内に走破するエンデュランス馬術という競技を行っていたんです。馬好きが高じて、馬を飼えるところに引っ越したいと思い、農地を手に入れるために農業権を取得し、お米を作ったりするようにもなりました」











