モンゴルは、20年ほど前にテレビ番組の企画で旅をした場所だそう。

仕事をしないでヤフオクばっかり(笑)

馬と徒歩での旅の途中、遊牧民の方が野ばらの実と薬草を集めてお茶を淹れてくれたんです。そのお茶がすごく美味しくて、一杯目を大地の神に捧げる姿が印象的でした。また、一緒に連れていったヤギを食料にするためにさばく様子は、荘厳な儀式のようでした

 第三話には言葉を話すオキナインコが、第四話にはウサギが登場するが、鳥もウサギも村山さんの古い記憶の中にある存在だという。

「小中学生のころに見た向田邦子さんのドラマの中で、九官鳥が覚えた言葉を再現するシーンが強烈に残っているんです。ウサギに関しては、私をつくってくれた本の一冊である『ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち』というイギリスの児童文学を何十回も読み返しています。

 こうして振り返ってみると、子どものころからの経験が今回の物語と結びついているように思います。動物だけではなく、人間模様やほのかな恋愛なども描かれているので、温かい気持ちで楽しんでいただけたらうれしいです

最近の村山さん

少し前から茶道を習いはじめまして、袱紗のさばき方など複雑怪奇な手順を自主練しています。私はもともと骨董品や器、道具、着物、掛け軸などの和のものが好きなので、ここへきて集大成といいますか、ヤバいものを見つけてしまったような感覚です。広くて深い沼にはまり、仕事をしないでヤフオクばっかりのぞいています(笑)

村山由佳著『しっぽのカルテ』(集英社)税込み1980円
【写真】動物病院が舞台!心が温まる直木賞作家の最新作

取材・文/熊谷あづさ

村山由佳(むらやま・ゆか) 1964年、東京都生まれ。立教大学文学部卒。会社勤務などを経て、1993年『天使の卵―エンジェルス・エッグ』で小説すばる新人賞を受賞。2003年『星々の舟』で直木賞、2009年『ダブル・ファンタジー』で柴田錬三郎賞、中央公論文芸賞、島清恋愛文学賞、2021年『風よ あらしよ』で吉川英治文学賞を受賞。『おいしいコーヒーのいれ方』シリーズ、『二人キリ』、『PRIZE―プライズ』など著書多数。