平は2020年からハワイで妻と娘と暮らしているが、日本に戻って活動する予定は今のところはない。
この年代で英語ができて、役者経験のある日本人は少ない
「撮影のスケジュールの取り方がアメリカと日本では根本的に違うんです。アメリカは1~2か月撮影が延びることもざらにあり、両方やろうとすると、絶対に日本の作品に迷惑をかけてしまいます。
海外の作品は、遠くへ行って時間をかけて撮影し、いわば巨大なマグロを釣って帰ってくるようなもの。拘束期間も長く、一度撮影に入れば数か月単位で家族と離れ離れになります。釣れたらデカイけど、釣れないと大変(笑)。そんなしびれるような感覚の中で生きています」
身長183センチと大柄だが、ハリウッドで活動を始めた当初は「外国人に引けをとらないよう、もっと身体を大きくしなくてはならない」と考えていたという。
「プロテインを飲んで、過酷な肉体改造に励んでいました。でも身体を大きくすればオーディションに受かるわけではなく、自分のベストな体形をキープし、役に応じた見せ方をすればいいという考えに変わりました。
例えば『SHOGUN 将軍』の石堂和成役では、あえて“行く手を阻む大きな石”のような存在感を出すことを狙いました。外国人の視聴者が見た際に、みんな同じ髪形や衣装だと区別がつきません。出てきた瞬間に『あ、でかいやつだな』と視覚的に差別化できる役作りをしたり、日本とは違うアプローチが必要です」
オーディションに合格して役をつかみ取る世界で、競争も激しいのが映画業界だ。
「この年代で英語ができて、役者経験のある日本人は少ないので、海外で活動できているのはラッキーなんです。でも韓国人、中国人といったアジア全体での競争はまた別で、オーディションで1回戦を勝ち上がると、2回戦にはもっと強い相手がたくさんいて、どんどん大変になっていくような世界です。今はその戦いに1日でも長くしがみついて、役者を続けていきたいという思いが強いですね」
まもなく『SHOGUN 将軍』シーズン2のロケが始まり、『レンタル・ファミリー』のほかにも複数の出演作品の公開が控えている。50歳を超え、今後やりたいことはあるのだろうか。
「演者やスタッフに対してすぐにOKを出しそうなので、統率力が必要な監督業には向いていないと思います(笑)。でも脚本を書いたり、プロデュースはしてみたいですね。ブレンダンのような素晴らしい俳優と仕事をして、できあがったものを見るのは本当にワクワクしますから」
最後に『レンタル・ファミリー』の見どころを教えてもらった。
「この映画は、見る人によって感動するポイントがまったく違います。孤独を抱える人が多い世の中で、見終わった後に誰かと話したくなる、誰かに電話をしたくなる。そんなきっかけになればうれしいです。海外でも公開されていますが、特に日本人の感覚にすんなりと響く作品なので、ぜひご覧ください」
取材・文/紀和 静
ひら・たけひろ 1974年生まれ。ハワイ在住。父は俳優の故・平幹二朗さん、母は佐久間良子。高校から米国に移住し、ブラウン大学、コロンビア大学大学院に進学。外資系企業に勤務後、27歳で俳優に転身。舞台『鹿鳴館』でデビュー後、NHK大河ドラマをはじめ、数々の作品に出演。2020年より海外で活動し、『Giri/Haji』(Netflix)で英国アカデミー賞主演男優賞ノミネート、『SHOGUN 将軍』(Disney+)でエミー賞助演男優賞にノミネートされる。出演作は『モナーク』『トルネード』ほか多数。

















