両親にもはっきりと言葉にしていたのに…
ケース3
優しい態度も言葉も全部ウソ。両親にも“結婚”を誓い、騙した男の手口とは
保険会社で営業職についている都内在住の裕美さん(仮名、33歳)は、普通に恋愛をして、男性とも気が合えばすぐに仲良くなれるほど社交性が高かった。だが、ある出会いがきっかけで、男性に対して心を開くことができなくなってしまったのだ。
話は4年前、彼女が29歳のときに遡る。仕事が終わると、よく飲みに行っていた裕美さん。その日も女性の友達と2人で六本木のバーに向かい、混み合う店内で空いている席を見つけていつものようにお酒を飲み始めた。
その隣にいたのが篠山(仮名)だった。彼は6歳年上の35歳で会計士。10年前に1回結婚したが1年で離婚して子どもはいない。半年くらい前まで5年間付き合った相手がいたが今はフリーだと自身の身の上話をしてきた。
裕美さんからすると、別に顔が好みというわけでもなく、それまでに店で出会い、仲良くなってきた男性のうちのひとり、という感覚だったという。意気投合し、いつものようなノリで「お寿司を食べに行こう」と約束した。
翌週、バーで一緒だった女性の友達と、篠山が連れてきた仕事関係の男性を合わせた4人で食事。その帰り際に裕美さんは、1週間後に篠山と2人で会う約束をした。
「その3回目のデートのとき、相手から“付き合ってくれないか?”と告白されました。そこで私もOKしたんです。どこに惹かれたのか? んー……、まじめそうで本当に優しい人だったんです。強いて言うならそこかな。私としては軽い気持ちでした」(裕美さん)
そこから毎週金曜日には必ず会うようになり、夕方から気になるお店で外食しては、そのまま裕美さんの自宅に土曜日の午前中まで泊まっていくようになった篠山。付き合って3か月後の誕生日には「薬指にして」と、指輪も贈られた。
週末に会えないことについて彼は「個人事務所を立ち上げたばかりで、収入が不安定だから土日に監査のバイトをしている」と説明。そんな中でも国内外の旅行に10回ほど行くなど、彼の優しさにだんだんと気持ちが近づき、付き合って半年ほど経つと、裕美さんも結婚ということを漠然と考えるようになった。
そんな生活が1年も続いたころ、裕美さんは「付き合っている人です」と、結婚も考えていることも合わせて自分の両親に篠山を紹介した。裕美さんのいないところで「1年後くらいに結婚を考えています」と、篠山も両親にはっきりと言葉にしていたそうだ。しかしーー。
「同棲することになって、私が住んでいたマンションを退去する手続きをすると“仕事のトラブルがあって今すぐは同棲できない。初期費用を払うから、とりあえず1人で住む家を借りて”なんて言われたり……」(裕美さん)
付き合って2年がたち、篠山に対してうっすらと不信感を抱き始めた中、裕美さんの父親が不倫をしていることが発覚する。篠山に相談すると、
「飲み屋の女性とかじゃないの?」
と、そっけない返事が。そして不思議なことに、それから篠山と連絡が取れなくなってしまったのだ。もしかしたら、父親の不倫を許せないのかも、と思った裕美さん。
「まじめな人だとずっと信じていたので、自分の付き合っている相手の親が、そんなことしているのが嫌になったのかな、って。あのときはそう思っていました」(裕美さん)
しかし、もしかしたら何かあったのかもしれない、と篠山が仕事場兼自宅にしているマンションに向かっても誰もいない。警察に安否確認を頼んでも、身内ではないので詳細は教えてくれなかった。
裕美さんは父親に不倫について問いただし、そのせいで篠山と連絡が取れなくなった責任を取るように迫った。そこで父親から不倫相手の連絡先を聞いた裕美さんは、父親と別れるようにとその女性に直接交渉したのだ。すると、ここから事態は意外な方向に進むことになる。
「私が父親の不倫相手に電話したときの会話を録音したデータを聞いた友人が、相手の言葉にキレて警察に通報。実は相手の夫が警察官で、自分の妻の不倫を知ることになり、彼は私の身辺のことを調べたそうです。その結果を聞いた妻で不倫相手が、父親に“私に別れろと言ってる娘も同じように不倫しているじゃないか”と……」(裕美さん)
娘が結婚を考えている、と紹介された相手が妻子持ちとは父親にとっても寝耳に水。自分の口から裕美さんに告げることはできず、裕美さんは姉を通してこのことを知ったという。
「でも、バツイチと言っていたし、そのことで誤解されているのでは、と弁護士さんに頼んで住民票を調べてもらったら、本当に既婚者だということがわかったんです」(裕美さん)
裕美さんが事務所兼自宅だと思っていた場所のほかにマンションを持っていて、そこが自宅だった。奥さんはもちろん子どもも2人いて、あろうことか、2人目が生まれたのは、裕美さんと付き合って半年のタイミングだった。
「騙されていた」
このことを知った瞬間、彼女の心は一気に冷めた。すぐに篠山に対して、慰謝料500万円の請求をした裕美さん。そこからは弁護士同士の話し合いとなり、篠山と2度と顔を合わすことはなかった。
結局、175万円という金額で示談が成立したのは約1年後のこと。最初は謝罪すると言っていたが、示談金を支払うことになると、謝罪は一切しないと告げられたという。
「今思うと、優しかったのもすべてウソだったんだな、って。付き合っていたころを振り返って、都合よく使われたことがいちばんムカつきますね」(裕美さん)
騙されたことで、男性を信じることもできなくなり、結婚どころか付き合うことすら考えられなくなってしまった。
示談金は、払えば許されるという“免罪符”ではない。女性ひとりの人生を狂わせた罪は重いーー。

















