運動・栄養・休養そして社会交流や知的刺激
生活習慣を改めれば、グレーゾーンでも、ある程度の回復が見込めるという。
「普段から運動・栄養・休養を意識してください。心臓病やがんなどすべての病気予防においてもこの3つが何より大事。認知症予防の場合はこれに加え“社会交流”と“知的刺激”が重要です」
運動については、中年期に1日30分程度の運動を週2回行った人の認知症発症率は、行わない人の半分以下であることがわかっている。
「認知症予防には、最も大きな筋肉である大腿(だいたい)四頭筋を鍛えるのが効果的。椅子に座った状態で、片足ずつ床と平行になるように足を上げる“もも上げ”や、平衡感覚を鍛えつつ下半身の筋力強化を促す“フロントランジ”などもいいでしょう。
ウォーキング、サイクリング、水中ウォーキングなどの有酸素運動も、前頭葉の機能を改善させるのでおすすめです」
栄養は炭水化物・タンパク質・脂質・ビタミン・ミネラルの五大栄養素をバランスよくとることが重要だ。糖尿病や高血圧などの生活習慣病が、認知症の発症に深く関わることも判明しているので、食事にも気を使いたい。
「“まごたちはやさしい”を合言葉に食材を選びましょう。これは豆類・ごま・卵・乳製品・わかめや海苔などの海藻類・野菜・魚・しいたけなどのキノコ類・イモ類です。
ほかにも地中海食といわれるオリーブオイルを主な脂質に野菜や魚、豆・穀物中心の地中海沿岸地域の伝統的な食事が、生活習慣病の予防と改善、認知症の予防にもなるのです」
食事の基本ルールは3つで、(1)穀物と野菜中心、(2)タンパク質は魚から摂取、(3)脂肪分は少なめということ。
「主食は玄米や雑穀米、タンパク質は納豆や豆腐・焼き魚からとり、野菜をたっぷりと。炒め物にはオリーブオイルを使い、お酒のアテには果物やナッツ類がおすすめです」
休養はリラックスやリフレッシュはもちろんだが、睡眠が最も大切。これは睡眠不足が続くとアルツハイマー病の要因となるアミロイドβがたまりやすくなるからだ。
不眠状態ではストレスホルモンであるコルチゾールが分泌され、脳の記憶を司る部位にダメージを与えるほか、睡眠の質が悪いと成長ホルモンの分泌が減り、認知機能が下がるなどの悪影響を及ぼす。
「理想の睡眠時間は7時間。そして30分以内の昼寝をする人はアルツハイマー病になりにくいとわかっています。しかし1時間を超えると逆にアルツハイマーになりやすいという研究結果もあるので注意が必要です。ちなみに休日の寝だめは体内時計を狂わせるので逆効果です」
そしてスウェーデンの調査では、人との交流を豊かに持つ人は、そうでない人に比べ 8倍も認知症になりにくいというデータがある。認知症は意欲・感情の抑制・知能が衰える病でもあり、それらが衰えるほど社会的に孤立し、症状は悪化していく。
定年退職した途端、グレーゾーンになる人が多いのは、行動範囲が狭まり、脳への刺激が減ったからとも推測できるのだ。
「だからこそ予防の観点でも人づきあい、つまり社会交流が重要なのです。人としゃべるときには相手の性格や境遇を考え、気を使ってしゃべるでしょう。これは日常でできる脳トレの最たるもの。
知的刺激を高めるにはたくさんのコミュニティーと関わり、多様な人といろんな話をしましょう。グレーゾーンから回復しやすい患者さんは、アクティブで好奇心が強いのも特徴です。でも難しく考えないでください。ご近所さんとお茶をしたり、同級生とランチをするくらいでも十分ですよ」

















