実際に起きた理想と現実のギャップ

【事例1】70代男性 人間関係で退去、1500万円が戻らず

 Mさんは妻亡き後、高級老人ホームに単身入居した。入居一時金は5000万円余り。資産家だったため、十分工面できたのだが、入居から数か月後に退去を決断した。他の入居者とうまく人間関係を築けず、精神的に参ってしまったのが原因だ。退去の際、入居一時金の約3割にあたる約1500万円は初期償却としてMさんの手元に戻らなかった。経済的に恵まれていても、重い代償といえるだろう。

「入居後すぐに退去した場合、初期償却として入居一時金の1~3割が返還されないのは通例。短期間での退去は金銭的なリスクが伴うのを認識しましょう。ただ、一部のセレブには初期償却のコストをそれほど負担に感じず、複数の施設を軽やかに住み替えられる方もいらっしゃいます」

【事例2】70代女性 自宅売却後に後悔、戻る場所がない

 Sさんは夫に先立たれ、夫婦で建てた戸建てでひとり暮らし。70歳を前に寂しさが募り、その家を売却して高級老人ホームへ入居した。しばらくは楽しい毎日だったが、隣人と折り合いが悪くなって退去を考え始めた。しかし、退去しても家を売ってしまったので戻るところはない。もんもんとしながら施設に留まっている。

「高級施設へ入居するために自宅を売るのは好ましい選択ではない。私たちはオススメしていません」

【事例3】60代夫婦 夫婦の価値観の違いが明らかに

 長年連れ添った資産家夫婦のYさん。夫は退職後、元気なうちに夫婦で高級老人ホームへ入居するのを夢見ていた。その夢を現実にすべく紹介機関を訪れ、話し合っているときだった。

 当然のごとく2人部屋を選んだ夫を妻は拒否し、夫婦別々の部屋を望んだのだ。高級老人ホームに入ってまで夫と顔を突き合わせたくないというのが妻の言い分。夫にとっては悲しい現実がそこにあった。

「ご主人はびっくりされるかもしれませんけど、夫婦入居では珍しくないのです」

脇俊介さん 株式会社プランドゥ代表。同社は老人ホーム紹介事業および老人ホーム検索・情報サイト「マイ介護ホーム」を運営する。脇さんは社長業と兼任し、入居相談員として相談者をサポートしている。
脇俊介さん 株式会社プランドゥ代表。同社は老人ホーム紹介事業および老人ホーム検索・情報サイト「マイ介護ホーム」を運営する。脇さんは社長業と兼任し、入居相談員として相談者をサポートしている。
【写真】プロ直伝「高級老人ホーム」選びのポイント“5か条”
教えてくれたのは…脇 俊介さん 株式会社プランドゥ代表。同社は老人ホーム紹介事業および老人ホーム検索・情報サイト「マイ介護ホーム」を運営する。脇さんは社長業と兼任し、入居相談員として相談者をサポートしている。

取材・文/百瀬康司