「セットプレー強化」だけではない本当の狙い
中村氏の就任に際し、多くのメディアやサッカーファンから「セットプレー強化」や「フリーキック指導」への期待を強調している。確かに、現役時代に「黄金の左足」と称された中村氏のキック精度は世界級であり、Jリーグ史上初めて2度のMVPを獲得した実績を持つ。しかし、代表コーチの役割はそれだけに留まらない。
現在の森保ジャパンのコーチ陣は、名波浩コーチと前田遼一コーチが主に攻撃面を、齊藤俊秀コーチと長谷部誠コーチが主に守備面を担当する布陣となっている。前田コーチがセットプレーを担当しているとの報道もある中、中村氏に求められる役割は「攻撃のアイデアの注入」という側面が大きいと見られる。
「FKが注目されがちな中村選手ですが、試合のどこにスペースが生まれるのか、相手の守備がどこで乱れるのか、味方をどう動かせば局面が前進するのかなどを含めた戦術理解に秀でていました。止まったボールだけでなく、流れの中でもゲームを設計できる選手だったからこそ、長く高いレベルで評価されてきたのではないでしょうか」
3月の英国遠征では、中村氏は解説者として現地を訪れていたが、選手の方から歩み寄ってくる場面が見られたという。「レジェンド」としての存在感は、ピッチ外でのコミュニケーションにおいても大きな武器となる可能性がある。
今回の人事には、JFA側の長期的な思惑も見え隠れする。山本NDは「我々サイドとしても、5年、10年先の代表チームを託せるような人材の有力な候補の一人であると考えています」と発言。
W杯北中米大会の開幕まで残り約2カ月。中村氏は5月の代表活動から本格的にチームに合流する予定となっている。「世界一」を目標に掲げる森保ジャパンにとって、この異例のタイミングでの人事が吉と出るかーー。

















