家族が崩れ。それでも産むと決めた
現在は昼夜いつ起こるかわからないてんかん発作をケアし、痰や排泄のケア、食事や入浴介助など、あらゆる手当てを美穂さんが行う。
「食事は口と胃瘻から行います。就寝前には痰の吸引をしてから、睡眠導入剤を入れ、寝かしつけます。夜は急変しやすく、呼吸が浅くなると人工呼吸器の力を借りるしかなくて。体重が22キログラムを超えた今は、入浴介助が大変ですね。ベッドから浴槽まで連れていく時など、もし発作が起きたらと不安になります」
最近主治医から、気管切開手術を行い、人工呼吸器をつけることをすすめられたが、迷いがあるという。
「人工呼吸器などの医療デバイスが増えるほど寿命は延びますが、そのケアはすべて親の責任。障害児を抱える家庭では、親が看護師並みのケアをしますが、高齢になれば同水準のケアを続けられるはずがありません。
将来どんな施設やサービスに、どこまで頼るのが許容範囲で、何が子どもにとって幸せか。医療デバイスを取り入れるなら未来まで見通し、覚悟を持たなければなりません」
竜成くんが1歳を過ぎたころ、次男・昌吾くんを身ごもった美穂さん。だが時を同じくして、夫は家を出ていった。
「仕事一筋だった旦那は竜成に関わろうとしないばかりか、施設に預けようと言い出したのがショックでした。当時は私も精神的に参っていて、食事も喉を通らず、気づけば体重は40キログラム以下に。そんな姿を見ていたから、出た言葉だったのかもしれません。
でも目の前で必死に生きる息子のことを、一番に考えてほしかった。そんな中での妊娠は、語り尽くせない葛藤がありましたが、実はもうひとり子どもが欲しいと願っていたんです。
もし竜成と私がふたりきりになったら、私はとんでもないことを……すべてを終わらせようと考えてしまいそうで……(涙ぐむ)。勝手ですが、生活に変化が生まれれば、子どもと前向きに過ごせる気がして。竜成も目は見えなくても、声や肌で感じ取れるので、兄弟という存在をつくってあげたかったんです」
帝王切開であれば、子どもが同じ病を患う可能性は低い。医師の助言も後押しになり、無事出産した。
「竜成と昌吾こそが、何よりの生きる原動力ですね。次男は歩けるようになってすぐ、自ら進んで長男のケアの手伝いをするようになったんです。でもヤングケアラーには絶対にさせたくなくて。手伝わなくていいよと言っても“これをしたらママはうれしいでしょ? だからするんだよ”なんて言うんです。
人のつらさを察しすぎる次男が気がかりですが、兄がいるせいで何かを諦めるなんて、させたくない。お兄ちゃんがいたおかげで、こんな仕事に就こうと思ったとか、将来きっと良い影響もあるはずです。だから次男には経験とお金を、長男には人とのつながりや生きる場所を、できる限り残してあげたいなと」


















