1893年に「外国人客専用のホテル」として登場

「国内初の本格リゾート」とも称される「富士屋ホテル」は、五輪を見据えてリニューアルを行い、2017(平成29)年春から2年間、休業した。かつてこの地で500年もの歴史を誇っていた温泉旅館「藤屋」の名前をもとに「富士屋ホテル」と名付けられたこの老舗ホテルは1893(明治26)年に「外国人客専用のホテル」として登場。終戦後、進駐軍により接収され、社交場として毎晩のように舞踏会も行われたとされる。

1980年7月3日、神奈川県の箱根を訪問された昭和天皇と香淳皇后
1980年7月3日、神奈川県の箱根を訪問された昭和天皇と香淳皇后
【写真】1980年に箱根を訪問された昭和天皇と香淳皇后。ほか、昭和天皇と家族の写真など

 1954(昭和29)年に一般営業を再開。チャップリンのみならず、米国の社会福祉活動家として知られるヘレン・ケラーら著名人が数多く宿泊したことでも知られる。

 富士屋ホテルは耐震補強工事のために2017年4月から2019年春まで休業した際、20(令和2)年の東京五輪・パラリンピック開催による訪日外国人宿泊客の増加を見据え、1878(明治11)年7月の創業以来初の大改装に踏み切った。箱根町ではホテルの改装が相次いでいたことから、富士屋ホテルも改装を通じて、競争力強化につなげる方針だった。だが、新型コロナウイルス感染症の大流行のため、実際の開催は2021年にずれ込む結果となった。

 箱根駅伝(東京箱根間往復大学駅伝競走)では、最も難関といわれる「山登り」の5区の坂を攻略すると「山の神」の称号が与えられる。箱根登山鉄道強羅駅近くのホテルに宿泊するため乗用車を運転して、箱根駅伝のコースとなる国道1号を通過する度に、シートで覆われた箱根富士屋ホテルがどう見事に改修され、どんなにぎわいをみせるのか、筆者自身も胸を高鳴らせたものだった。それだけにコロナ禍は残念なことだったが、現在では菊華荘を含めすっかり元の賑わいを取り戻している。

大島真生 1968年生まれ。産経新聞社で宮内庁、司法、調査報道班の各キャップ等を経て退社後、現在はジャーナリスト。著書に『愛子さまと悠仁さま』(新潮社)など