目次
Page 1
ー 引っ込み思案の少年が、帰り道の大喜利では主役に
Page 2
ー お笑いへのこだわり
Page 3
ー 今も続けているサッカー
Page 4
ー 「こんな面白いヤツが売れないわけがない」
Page 5
ー 共に過ごした「千鳥」の大悟とノブ ー 「一生やってくれる人」とつかんだ9回目での王座
Page 6
ー 哲夫の面倒見のよさを知る後輩 ー M-1の賞金で塾を開校。教育は、若者全員への投資
Page 7
ー 舞台を降りれば4児の父 田畑を耕し、家族を育む ー 次の世代に地球を残し、しんどい日々に笑いを届ける

「生きていると苦しいことがいっぱいある。仏教で“一切皆苦”というんですが、苦しくないなんて人、いないと思います」

 と穏やかな口調で語るのは笑い飯の哲夫。シュールなネタで人気を博す彼だが、実は仏教にも造詣が深い。神社仏閣が身近に点在する街で育ち、「物心ついたころからお経が好きで。なんか不思議やし声もカッコええなあと思っていた」という。

 そんな彼が、3作目となる小説を上梓した。タイトルは『頭を木魚に』(主婦の友社)。テーマは、仏教の主題でもある“苦しみをどう乗り越えていくか”。

 主人公のタクシー運転手が会社の方針という名の欺瞞の犠牲になり、身に覚えのないぬれぎぬを次から次へと着せられていく物語だ。

 苦しみを書く本人にも、思いがけない出来事が。

「8割書いたあたりで全部消去しちゃったんです。電車の中で書いていたんですが、『地面師たち』で頭を踏みまくるシーンみたいに、これでもかってくらい頭で何度も消去ボタンを押してたんだと思う(笑)」

 漫才に小説、仏教、教育、農業。いくつもの仕事を掛け持ちする哲夫の原動力は何なのか。

引っ込み思案の少年が、帰り道の大喜利では主役に

2000年にコンビ結成。相方の西田との共通点は「家庭環境が良かったところ」だという
2000年にコンビ結成。相方の西田との共通点は「家庭環境が良かったところ」だという

 '74年12月25日、奈良県桜井市に生まれた哲夫。実家は代々続く農家で、両親と姉、祖父母、幼少時は曽祖父母も一緒に暮らしていた。近所には日本最古級の巨大前方後円墳として有名な箸墓古墳をはじめ、歴史的遺物が多数。桜井市は、古代ヤマト王権の中心として栄えた“日本の始まりの地”といわれている。

「“日本はうちの地元から始まった”というのは、やっぱり誇らしいですね。箸墓古墳は、畿内説だと卑弥呼の墓という説もあり、市のマスコットは“ひみこちゃん”という女の子のキャラクターなんですよ」

 幼少期は外で元気に遊ぶわんぱく男子。

「自転車で手を離してどこまで行けるかを、よくやってました。あと河原にザリガニを捕りに行ったのに、タニシばっかり拾って帰ってきたり。でも、タニシはいらないから、その後ほかしに(※捨てるの方言)行くという(笑)」

 小1のころ、自転車でよく走っていたのが箸墓古墳の外周。そこで、不思議な現象に気づいた。

「子どもってバイクみたいに自転車を傾けて走りたいんだけど、かなりスピードを出さないとできないんです。それが、前方のくびれているところだけ傾けることができて。“古墳パワーや!”と思ってました」

 大人になり、テレビ番組で地元の人に聞いてみた。

「不思議なことを検証する番組で取り上げてもらって、聞き込みをしたんです。“あそこって古墳パワーありますよね?”って。そしたら“おまえ、あそこ下りやぞ”って。そういえば、逆方向に走ったことなかったなと(笑)」