動物たちといるのは私にとって自然なこと

 ところが、人気の絶頂にいた昭和50年代の半ば以降、テレビで佐良の姿を見かけなくなった。

 現役を退いた理由は、いくつかある。思いもよらぬスキャンダルに見舞われもしたが、他界した恩師の水島さんに捧げたアルバムを発売して歌手として燃え尽きたこと、声帯ポリープの手術で歌を禁じられたことに加え、祖父が創業した企業で非常勤の取締役として働く必要に迫られたことなどが重なった。

 その後も乳がんなどの病気も続き、都心の一等地から、所有していた那須塩原の別荘地に移住を決めた。

「なぜ、動物たちのために?と聞かれるんですけれど、生まれたときから家に犬や猫たちがいましたから、それが自然なことなんです。歌手時代も地方公演に行く先々で捨て犬を拾ってきては、母たちに怒られていましたね。そうしたら30匹以上にもなっちゃって。それもあってここに移住してきたんです」

毎日、野犬の保護活動に走り回る。この日も子犬を保護した佐良直美 撮影/齋藤周造
毎日、野犬の保護活動に走り回る。この日も子犬を保護した佐良直美 撮影/齋藤周造
【写真】紅白司会を5回経験! レコ大新人賞を受賞したころの佐良直美

 もともと今の自宅周辺には、捨てられた犬が多くすみ着いていたという。

「わざわざ捨てに来たりね、別荘の人が都心では飼えないと捨てていったり。しかも、ここはたくさん犬がいるから、もらってくれるだろうと、私の家の前に捨てていく人も後を絶ちませんでした」

 そんな状況を憂えて、海外からドッグ・トレーナーを招致し、犬のしつけ教室を始めた。現状を知るにつけ、飼い主にこそ、動物との暮らしについての教育をしなくてはいけないと感じた佐良は、犬と飼い主が共に学べる施設や、トレーナーの養成も始めた。

 彼女のもとを巣立った卒業生たちは優秀なトレーナーとなり、各地で活躍中だ。ここには、ドッグ・トレーナーを目指す人たちが宿泊しながら学ぶコースもある。

「犬より、人間に教えるほうがずっと難しいわね。エゴがありますから、人間には。生徒たちには夢を持つこと、働くことの大切さも伝えています」