春節でにぎわうはずの街もゴーストタウンのように静まり返っていた(エンさん提供)
春節でにぎわうはずの街もゴーストタウンのように静まり返っていた(エンさん提供)
【写真】全身を防護服で覆う人、自家製マスクを頭からかぶる人……中国での異様な光景

《現地レポート》武漢在住ライターが悲鳴
「マスクは残りわずか、足りません」

「新型肺炎が終息したら、まずは親戚や家族で集まりたいです。新春のお祝いはすべて取りやめたし、親戚とも集まりませんでした。春節がちゃんとできていないので、きちんとやりたいですね。みんなで一緒にレストランに行って食事がしたいかな

 と話すのは武漢市に住む中国人ITライターのエンさん(26)。両親と3人暮らし、市内には親戚もたくさん住んでいるという。

 1年でいちばんにぎやかなはずの春節を襲った新型肺炎。感染を防ぐため団体で集まったり、パーティーのような集会の開催は禁止されている。街からは人の姿が消え閑散としている。

 一方で、駅や空港には人が集まり、病院は満員。待ち時間が長すぎて口論になっているケースもあるそうだ。

「病院は人でいっぱいです。ただ、冬はもともと呼吸器疾患の発症が高い時季なので、普通の風邪やインフルエンザの患者も多いそうです。普通の風邪で発熱しているのに、診察される前まで“新型肺炎だ!”と思い込んでいて、病院内で不安がっている患者も多いと聞きます。病人が多く集まる病院は、感染の危険が高いと思います

 市民は人がいなくなった街でマスクを買い求めるための長い列をつくる。

マスクは今は全然買えません。うちでは以前、風邪の際に買ったものを使用しています。残っているのは9枚くらいで、全然足りません。できるだけ外へ出ないようにしています」

 人がいない理由は新型肺炎だけではない。

「武漢は大都市なので地方から来ている人も多く、春節の直前から多くの人が故郷に帰っています。ですからウイルスのせいで武漢から逃げているのではありません」

 同市の人口約1100万人のうち約半分は市外出身。帰省者も多く、数少ない残留者はもとから武漢に住んでいた人々だ。

「封鎖情報が出る前に、自主的に離れた人は多かったと思います。空港や駅、各道路まで政府が全部管理していますから現在は、一切出ることはできません」

 完全封鎖されている武漢だが、孤立無援というわけではない。交通統制以外、生活物資や医療物資の不足はないそう。

「商店とスーパーは閉店時間が多少早まりましたが、いつもどおり営業しています。大手の配送業者やショッピングサイトも稼働しています。屋台はすべて休業していますが、大手ケータリングサービスもいつもどおり営業しています」

 と、いたって普段どおりの様子を明かす。しかし、

「今回の騒動がどれだけ続くのかとても不安です。すでに仕事にも生活にも大いに影響が出ています。それにずっと家にいなくてはならないので、緊張感と退屈がつらいです」

※記事のタイトルを一部修正して更新しました(2020年2月4日16時15分)

街には全身を防護服で覆った人の姿も見られた(エンさん提供)
街には全身を防護服で覆った人の姿も見られた(エンさん提供)