「耳に突っ込むのはおやめなさい!」

 国内の中継においても、当初は全国のネット局が「1曲3分の歌のために中継車を出すのか!」と反発。しかし、それも番組の人気が上がるにつれ、むしろ積極的に協力してもらえるように変化していったという。では、ここからは宇都宮氏の記憶に残る中継名(迷?)場面を語ってもらおう。

「近藤真彦さんが『ホレたぜ!乾杯』で1位になったとき('82年11月4日)、東京・本郷の旅館に宿泊していた修学旅行生の前にサプライズで登場していただいたことがあるんです。秋元(康)さんのアイデアだったんですが、女子高生たちがパニック状態になってしまって……。もみくちゃにされた近藤さんは大変だったと思います。

 それから、中山美穂さんの『JINGI・愛してもらいます』が10位にランキングされた回('86年8月21日)。その日は新幹線で移動中の歌手が途中停車した駅のホームで歌うという、ベストテン名物の新幹線中継だったんですが、イヤホンの不調でオケが聴きとれなかった中山さんの耳に、中継スタッフの私が別のイヤホンを差し込むところがテレビにばっちり映ってしまった。それを見た司会の黒柳(徹子)さんから“宇都宮さん、耳に突っ込むのはおやめなさい!”と叱られたこともありましたね(苦笑)

 今をときめく人気歌手の姿を目撃できるとあって、中継先は常に黒山の人だかり。にも関わらず、大きな事故が一度も起きなかったのは奇跡と言ってもいいかもしれない。その中継と並んで、視聴者の人気を集めたのが、他の音楽番組では見られない豪華でユニークなセットであった。

『ザ・ベストテン』の貴重なセットデザイン図 提供:宇都宮荘太郎 (c)TBS
『ザ・ベストテン』の貴重なセットデザイン図 提供:宇都宮荘太郎 (c)TBS
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「セットについては、スタジオ入りする歌手が決まった段階で担当ディレクターと美術部のデザイナーとが曲を聴きながら構想を練り、セットデザインの決定後には平面図とデザイン画をもとに技術・美術の担当者と細かく打ち合わせを行ないました。セット作りは3~4人のデザイナーがローテーションで担当していましたが、みなさん素晴らしいセットを作ってくれました」