また、日本の水道事業は、水道料金の中に修繕費が含まれる形で徴収しているので整備にお金を回しやすい。

人口減で水道が維持できない

「ただし、人口が減っていくと施設の維持管理のためのお金が不足してしまいます。値上がりする背景には、そういった事情もある」

 自治体によって水道料金が違うのはこのためで、人口の多い都市部は比較的料金が安定、かつ十分な修繕費の積み立てがあるということになる。

 また、富士山麓に位置する静岡県長泉町や静岡県小山町というように、水源の豊かな場所も設備のコストを抑えることができるため水道料金が安くなる。反面、北海道の非都市部のような場所は、供給するための水道管も長くなり、管理・維持コストがかさむ。前出の県で比べてみると、静岡県では2351円、北海道では4279円と、1か月で約2000円も違うのだ。

「水道事業は、配管の取り替え費用などを見積もっているので、計画的に更新ができる体制になっています。しかし、高度経済成長期よりももっと前の時代に水道管を通した場所、例えば線路の下にある水道管などは、取り替えようにも取り替えることが難しいところもある。水道の事故が起きる多くは、こういう限定的な部分です」

 たびたびテレビで見かけるボロボロの水道管は、まさにこういったケースだと指摘する。

現在は硬質塩化ビニールが主流だが、古い建物は赤サビが出る水道管の場合も ※画像はイメージです
【写真】事故が起きやすい、錆びてボロボロの水道管

「旧式の鉄の配管は、サビ止めを施したライニング管に交換するなど順次対策が進んでいます」

 と山口さんは、水道管の管理などに過度に不安を持つ必要はないと話す。

 むしろ、危険なことは、人口減少に伴う水道事業のジリ貧化だ。

「東京都のように完全に自立している大きな水道事業体がある一方で、自治体がなんとかやりくりするような小さな水道事業体もある。そういった自治体は、収入が不足すると削減しやすい水道事業にかかわる人件費などを優先してカットしてしまう傾向がある。長年、地元の水事情を見てきた熟練者が減るばかりか、後進の育成もままならなくなる」

 老朽化に対しては対策を講じることができる反面、人口減少は各自治体の水道事業者だけでどうにかなる問題ではない。そして人材が減った結果、水道料金は高くなる。2043年には全国平均で43%もアップするという試算もある。“負のスパイラル”だ。

「業界全体として、人口減少に伴う問題に強い危機感を持って向き合っています」

 その解決策のひとつが、昨今盛んに叫ばれている水道の民営化だ。水道管の老朽化が著しい大阪市が、水道管交換事業を民間移譲する意を示していたが、採算が取れないことを理由に頓挫したのは記憶に新しい。