夫の家賃負担をめぐって対立

「残業できないから今月は給料が2万円も減りそうなんだ。緊急事態宣言が出たら、事務所が営業できなくなるのも時間の問題。休業手当だけじゃ元の6割だよ。だからコロナが終わるまでの間、家賃はそっちで払ってよ」

 そんなふうに自己中心的な夫の発言に悩んだ美乃梨さんは、2020年5月に再び筆者を頼ってきました。夫婦は家賃が月12万円の賃貸に住んでおり、美乃梨さんの手取りは毎月26万円、夫は毎月22万円。今まで家賃は折半、それ以外の生活費は美乃梨さんが負担、食費はその都度、決める。それが夫婦のルールでした。

 現在、夫は週末しか乗らない車のローン(毎月5万円)を返済中。そんなに苦しいなら車を手放すことを考えるべきですが、「お前のほうが稼いでいるんだからいいだろ?」と妻任せ。美乃梨さんは夫の守銭奴ぶりに怒りを覚えつつも、「6月から(家賃ぶんの)6万円を渡さなくていいから」と伝えたそう。なぜなら、大事なのはお金より気持ち。金銭的に大変な夫を助ければ、夫は美乃梨さんに頭が上がらなくなり、無神経な態度をあらためるはず。そう期待したのです。筆者も「コロナが収束し、旦那さんの収入が元に戻るまでの辛抱ですから」と勇気づけました。

 実際のところ、2021年3月からワクチンの接種が始まると解熱剤等を求める客が増え、勤務先は大忙し。美乃梨さんの収入はコロナ前より月2万円も増えたので、夫が押しつけてきた家賃全額をかろうじて支払っていたのですが、一方の夫はどうでしょうか? あろうことか美乃梨さんに追い打ちをかけてきたのです。

 政府のコロナ対策として2020年に持続化給付金や雇用調整助成金、2021年に一時支援金、月次支援金が新設されたのですが、夫が勤務する税理士事務所には取引先の事業所から「代わりに申請してほしい」という要望が殺到。夫は相変わらずテレワークを続けていたものの、勤務先は通常どおりに営業しており、明らかに忙しそうな様子。少なくとも他の業種のように緊急事態宣言の影響で「仕事がない」という状況ではありませんでした。

 そこで美乃梨さんは「忙しくしているんじゃないの? そろそろ家賃の支払いは元に戻してよ」と投げかけたところ、「うるせぇな。お前に何がわかるんだよ!? 面倒なことは後にしてくれよ」と逃げてばかり。同じ押し問答を半年間、続けても夫が家賃の負担割合を元に戻すことはなかったそうです。

「もう終わりだと思いました。コロナが落ち着いたら離婚しようと思っています」

 2021年11月、緊急事態宣言解除後に美乃梨さんは筆者の事務所を訪れたとき、そう涙声で訴えかけてきました。筆者は「旦那さんは美乃梨さんを都合のいい存在としか思っていなかったのでは?」と気持ちに寄り添いました。食費以外の生活費を出してくれ、家事を全部やってくれる妻。夫にとって美乃梨さんはパトロンと家政婦を兼ねる最高の相手ですが、美乃梨さんにとって夫は最悪の相手です。前から美乃梨さんは薄々、勘づいていたのでしょうが、コロナ危機で確信に変わったのです。「こんな夫ならいないほうがいい」と悟り、夫がいない人生……つまり、離婚を選択したのです。

海外赴任の夫が帰国したが

 そして2人目の相談者は結婚2年目の美鈴さん(仮名・38歳)です。彼女から相談を受けたのは2020年12月。

「コロナで彼の本性がわかりました! 私よりずっとあの女が好きなんでしょう? 彼に捨てられる前に、こっちから離婚してやろうって思っています」と言い、すでに吹っ切れた表情で離婚を覚悟した様子でした。Zoomのアプリを使って話を聞いたのですが、彼女と結婚2年の夫(49歳)との間に何があったのでしょうか?

 2020年2月、新型コロナウイルスの蔓延が始まったころ、美鈴さんの夫はちょうど単身で海外赴任中。当時、感染対策として遠距離の移動は自粛の対象に含まれており、夫は5か月間、赴任先にとどまるしかなかったそう。そして夫が自宅へ戻れることが決まったのは7月のこと。美鈴さんはようやく夫に会えるかと思いきや、夫は意に反して「落ち着くまで実家に帰ってくれ」と冷たい態度。しかし、美鈴さんは「ぜんそく持ちの私を心配してくれたんだ」と解釈し、素直に実家へ帰ったそう。

 こうして夫は誰もいない自宅に戻り、夫婦の別居生活が再びスタートしました。それからしばらくして、美鈴さんのスマホに夫から《家内を帰らせたから、もう大丈夫だよ》と意味深なLINEが届いたのです。美鈴さんは「誰かに送るLINEを間違えて送ったの? もしかすると不倫……?」と女の勘が働いたそう。