それでなぜ下腹が出て太りやすくなるかというと、横隔膜がほとんど動かないから。

「横隔膜とは肺の底にドーム状についている膜のような筋肉。実は肺には筋肉がなく、自力では膨らんだり縮んだりできません。

 そこで、肺の動きをサポートしているのが横隔膜。息を吐くときは横隔膜が上がることで肺がしぼみ、空気が押し出されます。反対に吸うときは、横隔膜が下がることで肺に空気が入ります」

 肺をサポートする筋肉は、他にも首から下腹部にかけて20種類以上、存在している。

「これらの筋肉は横隔膜と連動するので、呼吸で横隔膜が動けば、お腹の筋肉も刺激され引き締まります。ところが浅く速い口呼吸では、横隔膜がほとんど動きません。お腹の筋肉も使われることがないのでたるみ、下腹がぽっこり出てしまうのです」

 口呼吸の弊害は他にもある。

「呼吸で取り込まれた酸素は、肺から血管に入り、全身の臓器へと運ばれます。実はそのとき二酸化炭素がないと、酸素は血管から臓器に入れません。ところが浅く速い口呼吸では、酸素をとりすぎる一方で二酸化炭素が過剰に排泄され不足ぎみに。そのため、臓器に十分な酸素が届かなくなり、代謝が低下。太りやすく疲れやすくなるのです」

呼吸は自律神経を整える唯一の手段

 奥仲先生がやせ呼吸を始めたのは20歳のころ。目的は持久力アップだった。

「私は中学、高校、大学とバスケットボールをしていましたが、5分ほどで息が切れる使えない選手でした。そこで自己流で取り組んだのが、長く強く吐く呼吸法。持久力がつき、10分間コートを走り続けられるようになりました」

 後に呼吸器専門医となり、このやせ呼吸が医師として太鼓判を押せる、心身によい呼吸法であることがわかった。

「実は、呼吸は乱れた自律神経を整えることができる唯一の方法。横隔膜には自律神経が集まっているため、呼吸で横隔膜を動かせばリラックスを促す副交感神経が優位になります。私自身、信号待ちなどでイライラしがちでしたが、ゆったり待てるようになりました」

 リラックス効果もある呼吸法でへこんだお腹をゲット!