歩行を習慣にするだけ万病によく医者いらず
歩くことが健康にいいことは広く知られているが、習慣にすることで健康で長生きできることを裏づけるエビデンスも次々と明らかになってきている。まず、がんのリスクを減らす効果。
「がんの直接的な原因は遺伝子の傷。親からの遺伝や、紫外線、ストレスなど複合的な要因で遺伝子に傷がつき、日々がん細胞が生まれていますが、通常は身体の免疫細胞ががんの芽をつぶします。
特にがん細胞を撃退するNK細胞は、“適度”な運動で活性化するといわれます。ハードな運動は過度な活性酸素を発生させ遺伝子に傷をつけやすいため、やはり歩行がベストといえます」
歩行はがんの進展にも関係している。
「がんの末期で、なすすべがないという方でも歩くことで腫瘍マーカー(がんの有無を推測する目安)の値が10分の1や20分の1に下がり、余命宣告に反して長生きしている方もいます」
次に脳への効果。「歩かないために50代、60代でも認知機能が低下している人がいっぱいいます」と先生。歩くと脳の血流が増えて頭の回転がよくなり、加齢とともに減っていく神経細胞も増えることがわかっている。
「加えて、認知症になると脳内の神経伝達物質のアセチルコリンが少なくなるのですが、歩行はその分泌を促します。
また脳内ホルモンのドーパミン、セロトニンとアセチルコリンのバランスも大事ですが、薬と比べて歩行はそのバランスを自然に整える作用があります」
現代社会ではうつ病も深刻。
「脳内ホルモンのひとつ、セロトニンも歩行で分泌します。セロトニンは幸福感と関係しているため幸せホルモンと呼ばれますが、これが少ないとうつ病を招きます。セロトニンは、夜になるとメラトニンという睡眠ホルモンに変換され安眠にもつながるため、よく歩くとよく眠れるという好循環が生まれます」
糖尿病や高血圧といった生活習慣病にも高い効果がある。
「糖尿病は、炭水化物を4~6割に減らすロカボ食に1日2食の食事療法とウォーキングの習慣でほぼ改善します。この2つを続けると体重も減少。血圧は、1回30分程度の歩行で、歩く前と比べ平均で10~20下がります。生活習慣病と称されるものは食事と歩行で解決するといえます」
歩くことは腸の健康にも直結している。
「便秘は万病のもとです。胃腸は自律神経の働きでコントロールされているので交感神経と副交感神経のバランスが取れていることが大事。交感神経が優位になると便秘になりますが、歩くことで副交感神経が活性化され、バランスが整って便秘が改善します」
一部の例外を除き歩行は万病にいいと先生。
「慢性疲労症候群のような安静にしないといけない病気が1割ありますが、難病のリウマチや膠原(こうげん)病も歩けばよくなりますし、心不全や肺の病気のCOPDなどもゆっくり歩くことでよくなるとされているのがいまの常識です」